第291話 鎧騎士


関羽の娘さんであるミーキュちゃんは幼いけど2神の加護を持っていて、とても賢いらしい


片方だけの丸メガネ、大きな事典を持っている


ダンジョンの中に入ってくるなんて良いのか?



「ミーキュはとても賢明でしてな!ここまで来ることが出来たのもミーキュがいなければ難しかったでしょう」



と関羽は少しドヤって顔をしている


はにかんで関羽の後ろに回っているミーキュちゃん



今いるのは休憩地を兼ねた拠点だ



ここから先に行くもののため、そして先に行ったものが戻るための安全地帯でもある


そうだよね、ここまでは簡単って言ってもこの先がどうなるかなんてわからない


治癒魔法で肉体的には問題なくても精神的には少しずつミスも増えるかもしれない


どこかで休む必要があるのだ



ルールに乗った奈美を手で呼んでミーキュちゃんたちに挨拶しておく



「私は春日井遥、こっちは黒葉奈美、よろしくね」


「はい!よろしく!です!」


「ゴルルル」


「この子はルールね」


「・・よろしくです」



さらに関羽の後ろに隠れてしまった


うん、怖いよね、仕方ない


伏せているルールだけど私達でも大きさで驚くことがあるし、ビルの中なんて狭くて窮屈そうにしている


大人でも漏らす人がいるぐらいだからパニックにならないだけまだいいんじゃないかな


ここに食料を降ろし、逆に集めた資源を持って帰る人もいるようだ



「えとこれ食べる?」



取り出したのは氷砂糖と乾パンの缶詰


容器が円柱形で収納袋の中では少し邪魔というのがあったんだけど武器を片付けるときに側面が少し傷ついた


穴は空いていないと思うけど保存性が保たれているかはわからないしさっさと食べてしまおう



絨毯が敷かれた上に座ってミーキュちゃんを手招きする


ルールを見ながらトテトテ歩いてきたミーキュちゃんをだっこする


うむ、悪くない



「わわっ」


「これ見たことある?」


「おもちゃですか?」



どうやらこちらには缶詰はないらしい



「ううん、これは缶詰、中には日持ちする食べ物が入ってるの」


「これがカンヅメ・・四角くないんですね」


「開けてみる?」


「どうやって開けるです?」



白っぽい半透明の蓋を開けてその下のプルタブを指差す


奈美にも別で一缶渡す



「一緒にしよっか、ここをこうして、こう」



カシュッ



「おぉ」



私も一缶開けることにした


開けたのは黒ごまの付いた乾パン


固くない開け口で良かった



「どう?できそう?」


「やってみる!です!」



固くないプルタブだけど出来るかな?



カシュ



引っ張る方向が違ってたりして手間取っていたようだけど開けられた


こんなにも近くで緑の髪を見たことがなかったしちょっと不思議な気分だ



「できた!です!」


「じゃあ食べよっか?」


「食べ物なんです?」


「ふふっ、缶詰はここの口のところに気をつけてね?これは滑らかだけど金属だから切れちゃうかもしれないから、はいあーん」



ミーキュちゃんが開けたのはごまなしの乾パンに氷砂糖だ


開け口はなめらかで指を滑らせても傷つかないけど一応ね


バリが残ることも稀にあるかもしれないし



「おいしい、です!」


「こっちがごま付きね」



奈美がミーキュちゃんとのやり取りを羨ましそうに渡したミックスナッツの缶を開けた


奈美は宅飲みでミックスナッツの缶詰をよく持ってくる



「こっちはナッツなんだけどアレルギーとか大丈夫?」


「アレルギ・・?」



小麦とかも大丈夫かと少し怖かったけど大丈夫なようだ


いや、アレルギーも奈美が居るから大丈夫か・・少しは私も気をつけることにしないとな



「これはカシューナッツです」


「あーん」


「これはピーナッツです」


「あーん」



奈美はナッツの説明を1つずつしながら一粒ずつ食べさせていた


奈美は子供の扱いが苦手なようで少し困った顔でこちらをチラチラ見てくる



ここにいる人達にも紙コップでミックスナッツの大缶から小分けして渡していく


ちゃんと食べられるか聞いてからね


皆物珍しそうに食べてくれた



「これは・・植えて増やすことはできますか?」


「豆は焼かれたりしてると思うし無理じゃないかな?食べちゃって?」


「はい」



・・・・・



「食べる?」


「・・・・・」



じっとこちらを見て立っている鎧騎士さんたちに渡す


モンスターらしいけどこちらをじっと見てくるのは落ち着かない


受け取ったナッツを指で摘んで太陽で照らして見るように高々と持ち上げて観察して・・・頭を取り外して食べた



「っ!?」



兜の中に頭の中はなかった


やけにガシャガシャうるさかったけど中の肉がなかったのね


びっくりしたけど私の魔力の込めた目で顔が少しだけ分かった


ぼやっとしていても優しそうな顔で口に運んで食べて、ナッツは溶けた



なにかとても嬉しそうだ



人数も多いし、少しずつにはなるけど渡していくと喜んでくれているようだ


鎧も似たような豪奢なものだが男性のものも女性のものもある



<・・・とても珍しいな>


「そうなの?」


<神聖属性に耐性のあるアンデッドは特に珍しい>


「ここめちゃくちゃいるけどね」



救出に来たチームの人間よりもものすごく多い、100人は軽く超えているだろう


大きな鎧や分厚そうに見える服で身体の中が見えるものはいないから中身はわからないけど、こう、むさ苦しいまである



<死ねば悔いが残るものは多い、神に仕えたとしてもそれは同じだ>


まぁたしかにそれはあるかもね


<人は神に仕えて神に至るものもいる、俺のようにな>


チーテックも元は人だったの?


<多分な、もう古すぎて覚えてはいないがそのはずだ>


ふぅん


<だがいくら修行を積んだとしても、清廉潔白にしていたとしても、功績をあげようともな・・そこまで至れないものは多い>


そうだよね、神様がいっぱいいたのは見てきたけど人が皆神様になったらこの世は神様だらけになるし


<彼らは皆どこぞの神に仕え、後悔や絶望もあっただろうにな・・こう成れたのは幸いであろうよ>


「いい人たちだったんだね、成仏はしないの?」


<成仏・・?いや、こう・・・よくわからんな>



成仏では少し言い方が、伝わり方が悪かったのかもしれない


更に話を聞いていくと仕える神様がダンジョンを運営したら入れられることもあるし、彼らは彼らで人の役に立ち、うまくこのまま修行を積み重ねれば死霊という中途半端な状態から階位が上がることもあるそうだ



じゃあダンジョンで勝手に鍛えられて昇華できるの?


<そういうわけでもないな>



脳内で喋っていたのだが小型のチーテックが肩に出てきた


見た目は赤髪の私、だけど民族衣装のようなものを着ている


大きさはレアナー様のよくやる手乗りサイズだ


ナッツを差し出して食べさせる・・・いつもレアナー様にしているから自然と食べさせてしまった



<初めからそういった存在もいることはいるが・・迷宮において誰か人といることで彼らは自我を取り戻せる事はある・・・・ここのはおかしいな>



鎧兜達はナッツを食べさせてからなんか人間味が戻った気がする


肩を叩き合って喜んでいる騎士も居るし


なんか男性型の鎧騎士が女性型の鎧騎士に片膝をついてダンスを誘うように手を下から差し出している


あ、殴られた



「チーテック様の加護なのか?」

「やっぱり父さんの婚約者だな、意味がわからん」

「流石母上ですな!」


「これはチーテックがいるからこの鎧たちはこうなったの?」


<俺は知らん、ここの迷宮がおかしい>

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