第223話 死んだ竜


羽の上に積もった土を払って体を伸ばす



ポロポロと土塊が落ちる



世界を破壊するという魔王が暴れまわっているらしく神共に起こされた


魔王のいそうな場所をブレスで焼き払っていく、それでもなかなか魔王はいないようだった


部下に連れてきた30ほどの配下も一緒に焼かせるもいない


さっさと終わらせて酒を飲むなり眠るなりしたい



なのにいない



そんな時に今代の勇者と出会った


今代の勇者は異世界の勇者らしい


異世界の存在は面白く、話を良くした



「こっちの食べ物美味しくないよね」


「そう、なのか?」


「うん」



そうなのか?異世界ではこちらにはない食事が多いそうだ


よく食べる甘い菓子をあげてみる



「どうだ!?」


「けほっ!けほっ!!?」



食えないようだ


しかも腹を下したという、だが我との友誼故に食べきったことは評価する


人間の幼子であるというのだから一層悪いことをしてしまった



詫びにとっておきの果実をやった



これならどうだ!他の人間たちも喜んで食うほどの実だぞ!!


だがその反応は芳しくない


喜びの表情はあったが一瞬だけだ



「まぁ美味しいけど」


「そうであろう?」


「向こうのお菓子のほうが美味しいかな?」


「なぬっ!!!??」



向こうには甘味も酒も食べきれないほどあるそうだ


話を聞けば聞くほど食いたくなってきた



やる気になった



幼子と一緒に魔王軍を滅ぼして回った


われの背に乗せるなど特別なのだぞ?


もうすぐ神の位まで到達しそうだったがこの魔王討伐が終われば神共に報酬として力をもらおう


そして幼子についていって甘味を満喫するのだ!!!


日夜アオキチキューについて話し、幼子に好感を持てた



人なぞすぐ死んでしまうし守ってやらねば



羽ばたき1つで死んでしまいそうな幼子にはこれまでになく気をつけた


よく手足も落ちてしまっていたし血だらけの幼子は見るに絶えん


幼子は自分もうまいものが食えんだろうにこちらの食材で向こうの作り方とやらでうまい食事をつくってくれて一緒に食ってくれた


充分にうまいと思うのだがアオキチキューはさらにうまいものがあるそうだ


興奮した尻尾が建物を壊してしまった



我、反省



いつしか友となった幼子だがちっぽけなだけではなかった


我でも近づけぬほどの瘴気を切り裂いて魔王を倒してしまった


そして居なくなってしまった



我に一言もなしにか!!!?



腹も立ったが我も神々に言って力を少しもらい階位を上げた


人の作る建物よりも大きな我であったが小さくなれてよかった



「むむぅ」



早速アオキチキューに行ってみた


聞いていた通り世界は夜でもキラキラと明るく、野生の獣共は弱すぎる


人は加護を持たぬし当然雲まで飛んでこない


早速幼子を探した





我失敗



匂いがわからぬ


階位が上がり肉体を捨て、新たな存在となった



その際に忘れてしまった



幼子に言われた通り大騒ぎになったりするかもしれないしカイジューとしてやっつけられたくはないので透明になって探し回った


いつかは見つかるだろうと思ったのだがなかなか見つからぬ


我を脅かすものはいないし人目を避けて寝ていたりもしたのだがびっくりした



車とやらに轢かれた



びっくりした



まぁなんとか人を避けて魔力だよりに幼子を捕まえて危ない人里から山に逃げたのだが言葉が通じぬ


階位が上がるとそれまでの体を脱ぎ捨てる


幼子は我をわからぬようだ


一緒にいるうちにわかるようになるだろう


成長した幼子はこちらに帰ってきて神共に力を奪われたのだろうか?弱っちくなっている


仕方なしに力を貸していたのだが・・もしかしたら此奴幼子ではないのかもしれん


だがこの魔道具の魔力は間違いなく幼子、ついていけばどっちにしろいつか会えるだろう



すぐ死にそうになる人間である


手を貸して死ににくくなっているし任せて我は寝る



幼子にはいつかまた会えるだろう

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