第188話 少年から見た大学



「ここが大学かー」


「大学ってなんですの?」


「ちょっとよくわかんないや」



はるねーちゃんたちが通っている大学だ


高校を卒業してから通うものらしい、4年から8年ぐらい通うとかなんとか


中学とか高校ってやつみたいなものかな?


誰も制服は着ないんだ?



ちょっとワクワクしながら入っていく



信徒たちが通路の先々で待ってくれていて方向を教えてくれる


黒葉たちの護衛の人達だな


昼休みって時間にはまだ早いので大学内を見ていく


生徒のおにーさんたちはまばらにしか見ない


確か授業を自分で決めるから全員一緒に勉強しないでいい、だったかな?


大体でしかわからないがヨーコに大学について説明する、うまく出来たかはわからない部分は案内の信徒が補足してくれる


僕も参考になる



「異世界人はよく勉強するのですね」


「そうなの、かもね」



僕は通ったことがなくてよくはわからない


信徒の1人がこの大学のOBというものらしいので案内してもらう


生徒はこの巨大な校舎に何百人も通って専門の講義を受けるそうだ


生徒さんたちがチラチラ見てくるし手をふってくるのでこちらも笑顔でパタパタと返しておく



「あれは?」


「学祭の告知ですね」


「ガクサイとは何でしょうか?向こうにはない言葉の意味ですわ」


「学祭、学園祭というのは学生が主導して屋台や模擬店なんかをするものです、うちの大学はこの辺りではそれなりに盛況にやります」


「ふーん」



楽しそうだ


僕が小学校の頃にもあったような気がする、お金を使って校内でいろんなゲームをして景品をもらったりした・・・はずだ


今思うと買い物なんかの「金銭感覚を身につける」ための催し物だったのかもしれない


確かはるねーちゃんが水風船を全部取ろうとして大人に止められたんだ


懐かしいなぁ



ギュイィィィィイイイイイン!!!!!



「なんですの?!」


「楽器の音だよ」


「これが、楽器?すごい音ですわね」


<ひゃーびっくりしましたぁ>



広場にはステージが作られている


張られたチラシによると学祭というのは明後日からのようだが楽しそうだ



「洋介!」


「はるねーちゃんあれなんて楽器?」


「ギターかな?楽器には詳しくなくて、興味あるの?」


「うん、さっき音が出てたんだけどすごいね」


「そうね、今日はどうしてきたの?」



ヨーコとレアナー様と来たのは理由がある


またしつこく「レアナー教の活動をやめろ」とか「取材させてくれ」とか「うちの国に来てくれ」などと来た


「担当の人が話を聞きます!その間、別の活動に行ってきます!」とビルから出てきたのだ


国から手伝いで来た「レアナー教対策課」って人達に任せればだいたいはどうにかなる


ただ話を聞いて貰っても、その上でどう対応するのかは考える必要がなる



他にも対処して貰う人が増えたのでちょうど良かった



レアナー様がドーナツを食べたいと言っていたしついでにショッピングセンターで前に買っておけばよかったと感じていた服や靴を買っておいた


それと黒葉がレアナービルに忘れていた財布、信徒に届けさせても良かったのだけどついでに寄ることにした


色々と用事が一度で済むのは都合が良い



「これ持ってきたんだ、黒葉の財布」


「なるほど、ビルの方は良いの?」


「うん、ちょうどめんどくさくなってきてたしね」



来るのは面倒な「人」だけではない


毎日のように信徒たちや諸外国から手紙や荷物が届く


郵便の業者に言って特別にヤバそうな大きさや重さの物体は届け先を金道に言って買った周りに何もない工場に送っている


何度か爆発したし


全部そこに送ってもらってそれを僕が回収しに行くんだけどそれ以外にも直接届けに来る人もいる


信徒たちは郵送で色々送ってくれるけど直接持ってくる人までは流石に無下には出来ない


レアナー様も喜ぶしね



新しい信徒も色々持ってくるしアート作品を作ったので!なんて言って絵とかを持ってきて置いて帰る人もいる、わざわざ海外から


レアナー様も何故か人気でデザイナーの人たちが服を持ってくる、はるねーちゃんにヨーコや黒葉の分もある


きっちり4人に合った分しか無いので他に使えない、だけど何人もの人が袋入りで持ってきておいていく


無料なのはいいがこれがまた場所をとるのだ・・・


そんな荷物は他にも様々だ、化粧品や食品、毛布に医療キットなどなど地球の様々な場所から送られてくる


一日でビルの1階は埋まってしまう


だから毎日のように荷物を買った工場を倉庫にして保管し、僕が【収納】して城に持っていって仕分けしてもらう



「うちの国に来てくれ!」と腕をつかんで引っ張るぐらい率直な相手も後を絶たないが・・・



「これから食堂で奈美と待ち合わせなんだけど来る?」


「行くー」


「私達が食べに行っても良いんですの?」



早い時間に時間つぶしにたこ焼きを食べていてお腹はそんなに空いてないのだがはるねーちゃんと黒葉がいつも来ている場所をちょっと見てみたい


というかこの大学っていうのはすごく気になる


行ってみると黒葉が座っていた


外では少なかった大学生も楽しげに笑っている


僕が入るとざわめきは増え、とても注目を集めている



「はい、これ財布」


「え、あ、ああ、ありがとうございます!」



黒葉はいつもの神官服とは違って新鮮な気がする


僕はいつもの僕用の神官服だけどね


黒葉の大神官服は一枚だしまた汚したのかな?それとも大学では脱いでるのかな?



レアナー様は最近僕じゃなくてもみんなの肩や頭に乗ってるし遠慮なんてしない


何なら頭の上でお菓子を食べてるときもあるぐらいだから結構服が汚れる


黒葉もよく汚されてるし洗濯中かもしれない


また向こうで大神官服貰ってくるか、ドーナツ一箱ぐらいで



「いつもと違ってかわいーね」


「そ、そそ、そうでしょうか、へへ、へへへ」



真っ赤にしてる黒葉、照れてるのかな?


<ほらもっといくですぅ>


僕の首の後ろから頭を軽く押してくるレアナー様、やめて僕もちょっと恥ずかしいからね、これで終わり!


周りがざわざわしてるし僕らを見て「「「おー・・・」」」なんて言ってるが暇なのかな?



「ここは食事する場所としては騒がしいのですね?」


「学生の食堂だから」


<若い子がいっぱいいるのですぅ>


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