第161話 夏といえば友達だ
「阿部さんは幽霊が好きなの?」
「幽霊が好き・・・というよりも未知を解明することや分析することが好きだと思う、少年は?」
「僕は、好きなことってあんまりなくて」
私のような変人と話すのはこの少年にとっていいことだろうか?
子供はいない私だけどこの少年のことが心配になった
まだ出会って2時間と経っていないがこの洋介少年とは波長が合うとでも言うのか、まるでの竹馬の友であったかのようにしっくりときている
知識は私の知らないものも多く「幽霊はその土地の特性によって顕現しやすい」など私としても納得できる部分がある
幽霊調査について2人で熱く語り合った
ネットでこういう話はできたが面と向かっての話は始めてだ
こう言うのも悪くない
「少年、君のライフワークとはいったい」
「失礼します、阿部様、元杉様、ご夕食の用意ができております」
「はーい!阿部さん一緒に行こっか?」
「そうだね」
機材をさっとチェックし、大広間に行く
この旅館では大広間で一緒に食事するのが通例である
とは言っても最近は私しかいないが女将はもてなしてくれている
最近は幽霊騒動について詳しく聞きたかったし女将や従業員も一緒に食べるように無理を言っていたのだが今日は違った
女性が4人いた、夏だし旅行客か?
見ればいずれも顔の整った美人である、モデルの集団とも思える
え?1人、耳が横に長い?
・・・最近の若者のファッションというのはわからんな
「ここで幽霊調査してる阿部さん、こっちがはるねーちゃんに黒葉にヨーコにケーリーリュ」
洋介少年に連れられて紹介された
だけど「はるねーちゃん」では通じないぞ少年
「洋介がすいません、春日井遥です」
「く、黒葉奈美です」
「ヨーコルノリア・メレニ・フォプセ・ケメヌ・セセ・マリュニャロ・ガムボルト・マルディですわ」
「***** ******* ****」
外国人だろう、一人はすごく長い名前だ
耳が長い女性は何語かもわからない
「よろしくてよ」
「春日井さん、黒葉さん、ヨーコルノリアさんでいいのかな?申し訳ないけどもう一人は聞き取れなくてね、ケーリーリュさんでいいのかな?」
「「「おー!!」」」
何故か拍手が起きた、なんだか照れくさい
「まぁまぁ、食べましょう!」
相変わらず美味い
刻んで揚げたタコのサラダ、ねっとりとした刺し身、香ばしい天ぷら
「おいしー!」
「** ****! ***!! **~」
いつもなら食べながらでもその日の調査について考えていたのだが今日は姦しい
食べるたびに耳が長い女性が気になる、あれ本物なのか・・・??
おそらく日本食に感動しているのだろう、外国人の感動に水を指すような無粋な真似はしない
「ところで阿部さん」
「なにかね?」
「幽霊のレイラインだっけ?店主さんに話してもらってもいい?」
「勿論いいが・・・」
ちらりと楽しそうに話している女性たちの会話に水を差したくはない
幽霊調査なんて日本で受け入れられないのはわかっている、この少年のように受け入れられる方が珍しいのだ
「レイライン?と申しますと?」
女将にそう言われると答えねばならん、女性陣はこちらを見ているが仕方ない
「いえ、まだ調査中ですが霊道のほうが可能性はあります、撮影された幽霊を調べて見るに幽霊の移動する方向がわかりましたのでもしかすればこの旅館が霊の通り道になっているのではないかと、勿論別の可能性もあります」
「なるほど」
「どうしますの?」
「この宿屋気に入ったし僕が全部やっつけちゃうと良くないかなぁって」
「少年、君はいったい・・?」
「僕はレアナー教の神官をやってるんだ」
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