第162話 夏といえば魔法だ
元杉神官を遙みたいに「洋介」っていうのは恥ずかしいし「元杉神官」のほうがしっくりとくる
依頼があった旅館について調べてみた
元杉神官としては儀式や悪霊退治はまだ受けたことのないがレアナー教のお仕事の中では治癒と同じぐらい大切なものらしい
レアナービルからも近い、ある一点を除いて気になる点はない
旅館について調べてみると隠れ家的な老舗
元杉神官のことだから一瞬で悪霊退治をして終わりかと思ったら元杉神官は何かを考えているようで何日か予定していくことになった
私とレアナー様と元杉神官の誰かが残るかと思ったのだけど異世界で会った大神官さんことホール・レセイケさんとケーリーリュさんを連れてきた元杉神官
「こっちのほうが可愛くない?」
「ん、私はこれで」
旅館に着くとあまり幽霊の気配は感じないし、分からない
ただ旅館内には撮影機器のようなものが多く設置されていることからレアナー教を意識したテレビ局かなにかかと勘ぐってしまったがなんでも幽霊調査をしている方が3ヶ月も前から泊まっているそうだ
「ケーリーリュさんはこっちではモテモテになりそうですね」
「ふふっありがとうございます」
テレビで少し知っているが幽霊が来ると温度が下がるとか明らかに影の形をした人が映るなど嘘かどうかわからないものも多い
幽霊が出るのは夜からだそうなので昼はこっちで食べるから大丈夫と伝えてビーチに行って、なぜか水着を選んでいる
・・・・・遥は凄いナイスバディだな
遥は水着も秒で選んですぐに着替えてダッシュで砂浜に行った
遥の水着は黒でシュッとしたリボンが付いているビキニだ
スポーツや体を動かすのが好きな遥らしい
私は・・2人の分の水着を選びつつ、私自身は合いそうなもの決めていた
私はもっと地味なもの地味なものと探していたが、元杉神官に見せたいというのもあって少し派手な黄色い水着にした、胸の中央のリングがちょっとエッチィ気もする
「安心する」
そう元杉神官に言われて心が舞い上がった
元杉神官は水着にパーカーを着ていて開いた前から胸の傷跡がくっきり見えているのが痛々しい
水を掛け合ったりして少し遊んでから訓練をすることになった
「単純な【魔力障壁】は使えるようになりましたか?」
「少しだけなら」
「なら水の中に入れてかき混ぜてみてください」
「はい」
やってみて凄く難しい
板状の障壁が波によって様々な方向から圧がかけられてあっさりと霧散してしまう
お手本を見ると水の上に体を浮かばせたり、洗濯機のようにかけ混ぜたり、小魚を浮かせていた
「黒葉の魔力は聖下から貰えるのでいくらでも練習できます、うまくなればあのオークの結界のようなこともできますよ」
あのオークのように、か
なるほど、焚きつけるのが上手い
いまだ慣れない魔力をどんどん消費して何百枚も割って、精神的に疲れた
肉体的な疲れはないのにプールのあとの国語の授業のように疲労しているのがわかる
遥の方は水上を走る訓練をしている、バシャンバシャンと派手な音を立てては沈んでいっている
向こうの指導役のヨーコさんは波のある水上であるにも関わらず氷上のスケートのように滑っていた
いい匂いがして元杉神官を見る
バーベキューだ、それも海鮮系
ヘトヘトになりながら食べる、ホタテの旨味がすごい
ヨーコさんもケーリーリュさんもこれにはご満悦なようで特にとうもろこしが気に入ったらしい
私は最終的にしいたけが最高だと思った
肉厚なしいたけがクニュクニュと歯をはね返して独特な旨味が口に広がる
お酒飲みたいが仕事でもあるし我慢
日本酒の辛口でしめたいところだがここは瓶のサイダーだ
ケーリーリュさんの耳って喜ぶと動くのか
宿に帰ると軽くシャワーを浴びて一度寝た、まだ日は高かったが幽霊は夜に出るそうだし備えだろう
簡単な浴衣なのに人に着付けるなんて初めてだったから2人を着替えさせるのが大変だった
水着を気に入ったケーリーリュさんはそのままで居ようとしていたがエルフは向こうではそういうものなのだろうか?
一度寝ると頭がスッキリした
阿部さんという旅館の周りに機材を設置している人と元杉神官が来たのはびっくりした
見た目は切れ者そうな印象で眉間にシワが寄って不機嫌そうに見える
元杉神官と仲良くなっているように見えるが、元杉神官は物怖じしないからなぁ
さすが旅館だけあって料理が美味しかった
「お酒はありませんの?」
「ヨーコさん、仕事で来ているのにそれはちょっと」
「こちらをどうぞ」
「いいんですか?女将さん」
「勿論です」
喉まで「じゃあ私も」とでかけたがやめておこう
刺し身や天ぷらに見慣れないサラダ、牛鍋など、昼もかなりガッツリ食べたはずだが食べ切れそうだ
特に刺し身が美味しい、ねっとりとした鮪の赤身が良い
<これはなんですぅ?>
「これは鮪です」
レアナー様にも一口サイズで食べさせた、とても美味しそうだ
やはりこれでお酒が、いや、それはやめておこう
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