第118話 進めない
ミャーゴルの背で駆けるのがとても気持ちよかった
風が体を撫でていく
初めはしがみつくようにかたまっていただけだけどなんとなく体の動かし方がわかってきた
地面を蹴った瞬間にミャーゴルの身体が伸びる
それに合わせて身体をほんの少し前にシフトさせる
このほうが走りやすいのね
城壁の外には畑が大きく広がっていて農民の人たちがこちらに手を振ってくれている
だけど進むに連れて様子がおかしい
慌てて城門の方に走っていっていた
「どうしたんでしょうか?」
「聞きに行ってみます」
ガンガンガンキィン! ガンガンガンキィン! ガンガンガンキィン!
ドンドンドンドンドン!ドンドンドンドンドン!ドンドンドンドンドン!
急に壁の中から大きな規則性のある音が鳴り響いた、金属音と太鼓の音だ、お祭り?
急にミャーゴルが走り始めた
「わっ!?」
「誰か止めろ!」
「仕方ない!!行くぞ!!!」
空気が変わった、ミャーゴルたちも可愛さよりも真剣さが伝わってきたし、兵士たちも鬼気迫る勢いで私に追いつこうとしてくる
壁の向こうから太鼓や金属の音はずっと鳴り続けている
後ろでなにか兵士たちが言ってるが本気になったミャーゴル相手ではしがみつくだけで精一杯だ
とにかく前を見ると何も見るもののない道から一変し、人間じゃない生き物と兵士が睨み合っていて
――――――血だらけの洋介が怪物と戦っていた
「なに、これ・・?」
シャボン玉のような膜の中で怪物は奈美を盾にして洋介を槍で傷つけている
「むぐっ」
「お静かに、状況は分かりますか?」
勝手に前に出た足だったが後ろからレアナー教の神殿長に肩を掴まれ、兵士たちの後ろに連れて行かれた
「説明しますから静かに、聖下を助けるためです」
「はやく」
この爺神官いわく、街に現れたオークによって奈美が拐われて外に連れ出されそうになり、洋介が追いかけてきて決闘となったそうだ
この膜は決闘で誰も邪魔できなくなる、だからこうやって兵士もオークも見ていることしか出来ないでいる
「じゃあ、このまま指を加えてみていろってこと?!」
また洋介は切られて大きく出血している、見ていられない
洋介も反撃しているが奈美が足かせになっているのは見えている
今すぐにでも助けに行きたい
「この結界には聖下の婚姻関係者、つまり貴女なら入ることが出来ます」
「なら」
「お待ちくだされ、今行っても足手まといになるだけです、そうすればお2人の身がより危険となります」
そうだ、私が入ったところであの戦闘で洋介の役に立てるとは思えない
邪魔に、なるだけ・・・!
「なにか、方法は・・・?」
「クロバ殿をどうにか解放できれば聖下も戦いやすくなるでしょうが」
今、この状況を打破する方法
考えるんだ、私が入ったところでまだ兵士の中では弱い
あの怪物に太刀打ちなんか出来ない
また洋介の腕が飛んで、怪物は嘲笑って、楽しんでる
すぐに腕は生えてきているが、ゆるせない、ゆるせない
なにかしたい、たとえ無理でも洋介のために一太刀入れたい・・・!
あの豚の首をねじ切ってやりたい
武器、今の私に武器になるものはない、木刀なんて意味はない
魔力強化もちょっとした程度、役に立てない
なにか、なにかないの・・・?
・・・・・・そうだっ!!
「神殿長さん!御願いがあります!!」
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