第107話 貴族の思惑
「聖下!うちの息子を婿にどうですか!!」
洋介は私に「帰ろっか」と小さく言って退室しようとしたが一組の貴族に行く手を阻まれた
何を言われたのかよくわかんない
派手な濃い金髪の男と男、若い方でも私よりも歳上だ
2人とも自信の有りそうなニヤついた顔つきに多数の装飾品でギラギラしている
うちの息子を婿にどうですか???
私にか?奈美にか?
私も奈美もレアナー教に関わってからナンパされる回数は増えたと一緒に愚痴ったことがある
何もしなくても肌の具合はいいし、髪の艶も身体の軽さも少し良い気がする
こちらの世界の美的価値基準でも私達は良い方になるのだろうか?
だがそれにしては様子がおかしい
私にも奈美にもケーリーリュさんにもこの男たちの視線は一切向いていない
ギラつく目が洋介に注がれている
「何なら私はどうでしょうか?」
「僕は男は趣味じゃない」
「そうですか?以前来られたときは伴侶がいないと聞いていましたが今日はお2人も婚約者がいられますよね、その末席で良いのでいかがかと、男が趣味ではないなら我が一族の年頃の美姫を見繕いましょうぞ」
「興味ない」
まずい、この男ども、本気で洋介を狙っていた!?翻訳がバグっているわけでも私達狙いでもない!??
思わず洋介を隠すように私が前に出て洋介の肩を奈美が掴んだ
「いや、我が息子はどうでしょうか!!」
「ウチの娘はどうでしょうか?」
「抜け駆けすんなお前ら!!」
「聖下!私はどうでしょうか!!」
「私も私も!!」
「どきなさいよ」
多くの貴族に群がられた
私になど目も向けずみんな洋介一直線だ
男だけではない、男女どころか老若男女、皆、洋介を求めていた
ドレスを着飾った令嬢たちが若い貴公子に群がるなら理解はできる
たが老齢とも言えるお爺さんお婆さんでさえ興奮して洋介を見ている
「聖下に無礼ですよ、賊として対処しましょうか?」
ケーリーリュさんが前に出て杖を貴族達に向けた
「そのとおりだ!切り捨てられても文句がいえんのだぞ!ちれっ!」
リクーマさんに少し似た男が割って入ってきてどうにか貴族たちを散らしてくれてなんとかレアナー教の神殿まで帰ることが出来た
洋介は神殿に帰るとちょっと手伝いしてくるからねーちゃん達寝ててよと言ってどこかに行ってしまった
おい、さっきの貴族共について説明しろ
そういう前に逃げた洋介、流石に距離があったし追いかけずにケーリーリュさんにあれがどういうことだったのか聞いた
「貴族達は洋介聖下の加護が目的で婚姻を申し入れたのでしょう」
「いやそこじゃなくて男も洋介に向かっていってたじゃない」
「・・そこからですか」
こちらの結婚事情には絶句した
そもそも結婚や婚姻は男女でだけ行うものではなく、男同士や女同士なんてものもあるらしい
その上一対一だけはない、戦争があれば人自体の数も減るし種族によってはそもそも子供ができにくい
種族による差はなんとなくわかった
だが加護についての説明は気に食わなかった
洋介がこちらに来てから強い加護を持つ存在は増えたが洋介は各地で強力な加護を得ていた、ただの一つでも王になれるほどの加護を多く持っている
辺境の、ここの貴族からすれば結婚に成功すれば末代までの栄誉が期待され、歴史に名を刻むことができる
これ以上無い好物件というわけだ
「でも男同士だと子供は生まれないじゃない」
「そこは養子をとったり本人が力を得て功績をあげる、2人にそれぞれ生まれた子供結婚させるなんてこともありえますね」
いまいち何を言ってるかわからない、こちらの考え方がよくわからないので深掘りして聞いていく
男は男で結婚というシステムによって分け与えられた力を使って戦ったり養子にした相手に名前を与えることで力を与えるなどというふざけたシステムがあるらしい
30歳で60歳の養子がいたりしたこともあったり一夫一妻ではない、家系図はめちゃくちゃ酷いだろうなそれ
「アオキチキューには純粋な人種ばかりでエルフや獣人のような亜人はいないのですよね?勇者も種族は様々で子供が出来にくいこともあるので養子や男同士での結婚というのは勇者様によっては有益でも在るのです」
全く理解出来ない部分もあるがこれは文化が違いすぎる
種族による差もあるし、年齢による差、寿命の差、さらに元々の身分の差や本人のみならず、家族の影響力すらも結婚には影響する
もともと平民でも強い加護を得られれば王に匹敵、もしくはそれ以上の権威を得られる
しかし権威を得てもそれをすぐに振るうだけのノウハウなどなく、元の家族を守るためにも貴族との婚姻なんてこともあるそうだ
結婚や婚姻、恋愛についての理解が追い付かないのでとにかく色んな話を聞かせてもらう
こんな悲恋話があるんですよ、なんて色々聞かせてくれるケーリーリュさん
奈美と2人でいろいろ質問を投げかけるがカルチャーショックすぎる
日本では身分差や政略結婚ですら珍しいというのに・・・
疲れたので寝ようとしたら巨大なベッドの部屋に案内されてそこで寝るように言われた
起きたときもこの部屋だったと思う、起きたときにはなかったでっかい翡翠色の玉が部屋の角にある、なんだコレ?
よくわからないが多分飾りだろう
奈美とは私の部屋で私のベッドで寝たことはあったが私の部屋よりも大きいベッドの大きさにびっくりした
ベッドの中央になんて歩いていかないとたどり着けないじゃない
2人で年甲斐もなくちょっと遊んでから寝た
結構な時間が経ってもなかなか寝付けないでいるとケーリーリュさんが音もなく入って来た
洋介をカジンの捕縛布のような何かで持ち上げている
小さな声で聖下は倉庫で寝ていたのでお連れしましたとのこと
ちゃんとレアナー様の眠りの魔法をかけておきましたっておい?
奈美も寝れていなかったのか寄ってきた
寝かされた洋介を見て少し安心した
「ちゃんといいなさいよね」
寝てる洋介をほっぺをつついて遊んでいると奈美がスマホを持ってきたので写メしておいたらしい
暗めだけどうつってるのかなそれ?
まぁいいや、さっきまでは寝れる気がしなかったけど今なら寝れそうだ
「おやすみ、洋介、奈美」
「うん」
「ぅ・・ぅぅ・・んん・・・」
けっこう触ったからか寝苦しそう洋介には少し悪いことをしてしまったかもしれない
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