第100話 僕が主役の宴


「でもこれ微妙ね」


「そうかな、あ、美味しいご飯もあるけど出そうか?この料理は料理で持って帰れば向こうの人達喜ぶしさ」


「出しなさいよ!もう大好き!」



収納から大量の向こうの食品を出す


はるねーちゃん食べるの好きだもんね


ビルで転移を練習してる時に「こっちのご飯をいっぱい入れとけば向こうに行ってもいつでも食べれるんじゃ!?」と思いついてからいろんなお店を回ったんだ


日本は食糧不足どころかいっぱい捨てられるらしいし電話一つでいっぱい持ってきてくれる


お金は結構貰っていたし<いざという時に買っときましょー>ってレアナー様言ってたしガンガン買っていったと思う


向こうでは安全な食品をまともに買おうとすると大金がかかるし、値段はいまいちわかんないけど



「もしもし、ハンバーガー全種類100個ずつ、レアナービルにお願いできますか?」



まずこれで試してみた


田辺に凄い苦笑された「どう考えてもいたずらですよ、多分来ませんよ」って、でもLIVE動画で言ってたからか持ってきてもらえた


でも今度からは1店舗だけだと他の人がそのお店に行っても食べられなくなるかもしれないから気をつけましょうって言われて工夫した



「もしもし、カレーを100個ずつ、じゃなかった、余分になりそうな分でいいから全種類レアナービルにお願いします」



食品ロスってのを減らせるし、魔物の襲撃時や自然災害で必要な場面もあるだろう


いつもの屋台のご飯や軍用食は人によってはお腹が痛くなるらしく、日本では体質が合わないひともいた


最終的にラーメン屋、寿司屋、中華料理店にレストランなど、食品を扱うお店をぐるぐる回って結構な数を【収納】に確保できた


カクヤス?ってのにしてくれたりもしたし直子おばさんがやってる小さなカフェにも手伝ってもらった


器も軽いし捨てられるものいっぱいあって助かる



スーパーや魚屋さんも回ったしこの宴ぐらい余裕だ



「寸胴鍋とんこつラーメン?大食いファイターか!?」


「おおっ!」

「これはいける!!!」

「おいしーですぅ!」


はるねーちゃんに手伝ってもらっていろんな食品を出していく


出した食べ物の中でもラーメンや中華料理みたいに大きな容器に入れてもらったものは分けてすぐに食べないといけない



あ、この餃子美味しい!



神官たちも食べながらだけど手伝ってくれる


大歓喜で食べまくってる、足りるかなぁ?



「これは美味しいですね」


「あなたー!こっちよー!!」


「キャー!なにこれ!フワッフワで美味しいわ!!?甘い!!!」



みんなガンガン食べてるけど、僕の出す量を超えてみんな食べまくってる


というかいつの間にか人も増えてきてる



僕の収納に干渉できるのは僕とレアナー様だけだ


レアナー様はサシル様と大きなガラスの容器に入ったパフェに頭を突っ込んで食べている


神様だけじゃなく精霊まで集まって食べてるからあっちは見るのも眩しいな



「黒葉は?」


「奈美ならあそこで寝てる、次は?」


「はい」



結構疲れたけど周りで食べてる神官や子供の笑顔を見るとがんばれた


旅の間なんかはご飯はないし、餓死者も多くいた


大事な人を亡くして呆然としてる人もいたり、将来に希望がなくてみんな暗い顔をしていた


あの頃はまだ収納するだけの魔力もなくて食料が足りずに眼の前で死んだ命もあったし、治癒魔法で強引に生かそうとしても無理なときもあった


それに比べると泣いて美味しいって言われると嬉しいな



僕は僕の目的のために旅をした



だけど、こうやって助かった命もあって、笑ってご飯を食べている


たまにはこういうのもいいかも知れない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る