第96話 決意のプロポーズ


あれよあれよと数人がかりで磨かれドレスに着替えさせられる



「これなんてどうでしょう」


「洋介様の衣装を誰か聞いてきて!」


「あ、あ、あの」



この人達も神官なのだろうか、とても嬉しそうに私の衣装を選んでくれている


だけどそれは間違っている    



「こっちのほうが似合うわ」


「もうちょっと露出増やさない?もう一人は胸がすごかったわ」


「わ、私違うんです!!」



やっと聞いてもらえた



「私は!元杉神官の部下で!婚約者は遥の方、で!」


「では貴女は聖下のことをなんとも思ってないのですか?」



好ましくは、思っている


だけど元杉神官には彼女が、それも親友の遥がいる


口にも出せない、誰にも言えないことだ


だって遥なら応援してくれるはずだ、だけど遥は吉川に裏切られたばかりだ


それに横から見ていて遥は隠してるつもりだろうが意識していることがみえみえなのだ


お似合いの二人、そこに私が割り込んでいいことなんて、なにもない



「じゃあ、私、聖下に結婚を申し出てみようかしら」


「「「きゃーっ!」」」



とんでもない発言に思わず歯を食いしばってその人を見てしまう


あれ?言った人もきゃーって叫んだ人たちもこっちを見てる



「え?」


「顔に出てますよ、なんで好きなのにそんなに苦しんで何かを隠しているの?教えてください」


「なん、で」


「バレバレですよ、何年結婚の女神様の神官やってると思ってるのよ」


「あ、え、あ・・・・・」



ちょうどいいかもしれない


そう頭によぎるがここで話さなくてもいいはずだ


胸のうちが一杯で、元杉神官とすれ違うだけでドキドキしてしまってる時がある


ここなら異世界だし、いや、でもここで話せば二人に知られるかもしれない



「これは貴女のためだからね?やりなさい」



うつむいてブツブツいってた人が私に小さな杖を向けていた


身構えてしまったが杖から飛び出たのは小さな光で、それが当たると心に力強い新緑を愛でている時のようなの心地良さを胸に感じ



私は洗いざらい喋った



周りの神官さん達は私の話を聞いていてキャーキャーいっている


でも、真剣に話を聞いてくれている



「貴女は貴女の幸せを考えてもいいのだと思います、そして貴女の幸せに聖下ともう一人の方も一緒でいいではないですか?」


「でも、日本じゃダメで」


「ここはアオキチキューではないですし、聖下はレアナー様の愛し子、年齢を重ねればどちらにせよ多くの愛が必要となるでしょう」


「よく、わかりません」


「もしもの話です、ですが、そうですね」



何かを考えているような神官さん



「順を外して結果を話します、このままではあの二人はおそらく不幸になります」



何でも話させる魔法をかけられたのかな私


無理やりじゃないか、こんなの


そう思いつくよりも前にとんでもないことを聞かされた



頭の中がグルグル回る



どうすればいいのかはわかる、どうしたいか、それもわかる


やっちゃいけないことだというのわかってる



「わたし、決めました」



ドレスで女神様のように綺麗な遥、それといつもよりも少し綺麗な服になっている元杉神官


いつも言葉が出ない、出ても間違っていたり余計なことを言ってしまう私だ


だが今日は染み渡る水のようにすっと言葉が出た



「遥、元杉神官、私と結婚してください」


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