第77話 世界チャンピオン来日


日本に来るのには遠かった・・本当にだ


飛行機で来たのだがえらく長くかかった気がする


そもそも広いアメリカから出る必要はないと感じていたが行ったことのあるフランスにイタリアも遠かった、飛行機は乗ってるだけなのにほんと疲れちまう


先に病院に行ってる妹夫婦と姪っ子に通訳に連絡を取る



今にも死にそうってわけじゃない



いくら手術を繰り返してもいつかは死ぬし長くは生きられないらしい


日本の空気ってわずかに酸っぱい気がする、じめっとしてるからか?


だが悪くない、結果はわからないがここには確かに希望がある



とりあえず群がるマスコミをあしらってリムジンに乗り込む


すでにマネージャーのランディが助手席に乗っていて運転手のおっさんと仲良くなっていた


ランディも古いダチだがまじで誰とでも仲良くなっちまう


近所で有名な黒人嫌いな夫婦とだって3日で肩を組んで笑ってたほどだし「ちょっとチキン買ってくる」と言ったら何故かアラスカにいた面白いやつだ




少し外の景色を眺めていたのだが映画と同じような雰囲気だ


漢字にカタカナにヒラガナの看板、漢字一文字の木製の看板


意味はわからんがかっこいいな


なんて見てたんだがいつの間にか寝ちまってた



起こされて外を見るとタイムズスクエアよりも人がいた、物凄い人数が並んでやがる


あってる、よな


やはり寂れたビルだ、写真で見たとおりだ魔法使いの住んでるようには全く見えない



写真と違うのはビルに向かって2列で物凄い数が並んでいたことだ


俺と同じく病気の家族でもいるのか?日本人が多いがチラホラと別の人種もいた


構わず先に行く


途中握手をせがまれたりもしたが先を進む、今はファンサービスしてる時間はないんだ


入り口につくとしまっていた


白人のにーちゃんが近くにいたので聞いてみる



「約束してるんだが今日は休みかい?」


「チャンプだよな?さっきまで空いてたんだがどうやらVIPが来たらしい、もしかして君かな?」


「だとしたらすまない」



ノックしてみるとドアが開いた


背の低いキュートなジャバニーズガールだ



「は、ハローミスターボブスタットレイ」



ものすごくわかりにくいカタコト、しかも棒読みだ


だが歓迎されてることとちゃんと話が通ってることに安心する



俺は昔から「礼儀正しく順序よく」っていう段取りが苦手だ


トレーナーのリックになんて会ってすぐだったかな「一度リングで力を見たい」と言ったらお前は馬鹿だと言われたのが懐かしい


自分でも馬鹿と自覚はしてるがあんなにまっすぐに言われたのは初めてだったな、おっと



「Hello」


「さすが本場の発音……ナイスチューミーチュー、ウェルカム………カムオン?」


「Thanks girl」



入ってみるとサングラスの男たちがいた


ボディチェックか?


いや、何故か困惑してるスーツの男どもをそのまま素通りして部屋に入る


中には座ってるテレビで見たことのある顔に壁際にはズラッと鞄を持ったスーツの男どもがいた


座ってた男どもがこちらを見ると驚いていた


開いてる席は一つ、おそらく俺の席だろう


ランディはいつの間にか居なくなっていた



おいおい何だこれ



アメリカの大臣だったか?政治には興味が無いがトーマス・ホワイト、それと知らない国の……多分ニュースで見たことのあるやつ


そんなやべーやつらが同じように椅子に座っている


サミットのようなメンツに見える


度胸のあると言われる俺でもこんな連中の隣は嫌だな、せめてジュードーの金メダリストとか野球選手が横にいてくれると助かる



政治家共と同じ席にいきなり座らないといけないなんてなんて最悪なんだ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る