第69話 後輩ども容赦しないからな?


大学では好きなことは見つからなかったが友達から「人に合わせてなにか考えてくれるのすごいうまいよね」と言われたのがきっかけだった


飲み会をセッティングしていただけのはずだった


だけど飲み会って参加する全員の好みや流行りの料理に待ち合わせの場所、日付に時間、天気に店内の間取りなどなど考えなければならないことが多い



自分としては当然だし苦労はあまりないと思うのだが他の人は「無理無理そんなの考えられない!」という



服を人に選ぶときも瞳の色やその人のお化粧の傾向、今の髪の長さでできる髪型に合わせられる服を選び、リップやファンデ、アイライナーも合わせておすすめしたりもする


私にとっては普通なのだがどうやらそうではないらしく、私にとってこの仕事は天職だとさえ感じる


自分の通っていた大学も近く、教授や飲み会、サークルに顔を出しておけば後輩に結婚のプランをいただけることも多い


後輩の結婚式で何度か見たことのある子がうちに相談に来た


「先輩の結婚をここでしてたんで私達もー」と、よしよし、私の売上上位は確定だな!



にやけそうになる顔をどうにか我慢して笑顔を保つ



吉川春樹の方は覚えがあった


優しそうではあるが服の皺やはねた寝癖が見受けられて、だらけなさはそのまま

本人よりもとても綺麗な彼女と一緒にいたのが印象的だった


春日井さん、少し背は高く、モデルのような彼女さんだ、少し胸が大きいのは難点だがうちの会場のドレスのモデルにお誘いしたかった


残念ながら結婚式終了後に声をかけるタイミングもなかったけどね


軽い気持ちで今度教授の飲み会で紹介してもらおうと思っていた



いつの間にか春日井さんとは別れたのは今二人がいるので見て取れる


ここで口をだすほど私は甘くはない


今は金髪の彼女さん、坂上真莉愛さんがいる


先程この会場の前でプロポーズ、結婚をここでしたいらしい



彼女のお父様は大きな会社の重役で費用はそのお父様もち・・・・・ッシャー!!ボーナス確定!!!!!



にやけそうになる顔を抑えて最高の笑顔でおすすめしていく


今日は会場を使える日を知りたいらしく、あとでここにスポンサーであるお父様が来て話をしたいからと部屋を貸すことになった


できれば2人にずっと付きたかったが今日は別に予約されたお客様がいてその対応をしなければならない


幸いにして2人には席を外してほしいと言われたので良かったとは思う


本来いるはずだった支配人が居ない



一応、支配人やすぐに来られそうなスタッフに連絡しておく



ご予約は「プランについてと会場や設備について知りたい」とのことでよくある下調べだ


うちを選んでいただけると幸いだが来られるお客様には様々な選択肢がある


知っていただいた上で納得できるプランニングができれば幸いだ



来られたのはまさかの春日井さんだった


以前にも増して輝いて見える


美術館に飾られる彫像のような美しさ


フェロモンが具現化したかのようにさえ見える




だが最悪だ、最悪すぎる



元彼女と元カレカップルが一緒に結婚式場にいるなんて・・・!


お相手は・・よくわからないが少年?弟とかではなく婚約者らしい


今の時代に婚約なんて珍しい、しかも5歳差である


どこの国の服かは分からないが国産黒塗りの高級車に運転手付き、後ろにボディーガードと思われる体格の良いマッチョがついている


アラブのお金持ちやどこかの資産家のご落胤?日本人ではあるようだが話してみて少し常識はなさそうだ


こんなガチャのSSRみたいなカップルが来るなんてなかなかない、うまく行けばこれはまたとないチャンスとなる



だが同時に今はまずい


せめて1日ずらして明日にしてくれれば休日だろうと私が出勤したのに!



今日は水曜日だけあって結婚などはなく、町内会の催し物と会社の合弁式だけである


結婚式をしていない、それだけは幸いであった


いろんなプランニングを全部知りたいという元杉様に分厚い本をめくって身振り手振り動画を見せたりして教えていく


本来なら会場を見せて装置を動かせばもっとわかりやすいのだがこの式場の中を歩かせるなんて危険な真似はできるだけ避けたい


春日井様は後ろでウンウン言ってるだけで男の子、元杉様は食いつきが半端ない、ガンガン質問してくるし目がキラキラしている


普通は逆で男性は暇そうにして女性が食いついてくるものだが両方食いつきがなく予算の心配をされている場合などに比べてやりがいがある


このまま何事もなく過ぎてくれと願ったが春日井様がトイレに立った


引き止めたがそれも限界がある



「じゃあこれは?」


「レーザーで光らせてスモークを焚いて壇上に上がって歌ってもらうというもので・・・」



お願い、あの二人とは揉めないで!







そんな願いは虚しく散った







取っ組み合いをしていた4人、しかもなぜか浮気がどうのとか吉川は春日井様を彼女だと言うし、坂上様は私が彼女だと叫んで泥沼だ


元杉様が蹴られてスタッフと護衛の方たちで割って入った



本来なら警察沙汰であるが結婚式場でそういうのはよろしくない、できれば穏便に済ませてもらいたい


元杉様次第で直ぐに警察が来る事態だが激しく蹴られたはず元杉様はケロっとしていて別にいいと言ってもらえた



事情を知っている春日井様に聞くと春日井様は大病で死にかけて婚姻届をかいて渡したが破局し、代わりに2人のベッドの写真が送られてきた


しかも他のサークル仲間には私が不倫しただの二股しただのと悪評が流れていた


その後に洋介・・元杉様と再会して婚約したそうだ


一応の事情を聞いて帰ってもらうことにした


どちらが正しいかは分からないがスマホで写真やブロックされた証拠を春日井様に見せられておそらく言ってることが真実だとわかった



ブロックされた一覧には知っている名前もあった


あの二人はお父様が来られるということなので待ってもらうはずだったが今日は取りやめとなって帰ってしまった


後からお父様が来られたのでお嬢様の具合が悪いと帰られてしまいましたと言い訳して坂上様には一報入れておいた



ダブルチャンスだったはずなのに後からやってきた支配人にお叱りを受けた



片方だけでもビッグチャンス、なのにこんなことになるなんてとグチグチいびられた


式場のオーナーの息子だからって無能なお前にいびられるいわれはないのに私を叩くチャンスが有れば叩いてくるクソ上司に腹が立つ


家に帰って一応後輩たちの伝手で調べると春日井は事故と癌で数ヶ月前から学校に来ていないという情報もあるが


それとは別に来ていないのは


どこかの会社の爺と不倫してバレて逃げてるからだ

2股どころか4股していた

それを慰めたのが幼馴染の坂上だ


等色々と地雷の香りがプンプンした



休日なので大学の恩師を尋ねるとおそらく正しい答えが帰ってきた



「春日井?あぁあの子ね、可哀想だよね、若いのに」


「というと?」


「癌だよ、前の試験までは普通に学校来てたんだけどね、資料作るのに色々手伝ってもらったりしてたからこの間お見舞いに行ったらもう骨と皮みたいになってて・・」


「そう、ですか」



骨と皮?いやムチムチで色気ムンムンでしたけど?


そう言いたかったけどこの恩師はそういう言い方をすると話し方についての指導が長くなるので言わない



「でもこの間学生支援課に来てたって言うから治ったのかもしれないね」


「重病人だったのにですか?」


「ほら最近テレビで話題の登仙病院だよ、あの院長が宇宙人って噂の」



それなら聞いたことがあった


ここ最近話題になっている奇跡の病院だ


半身不随の患者さんが治って本を出したり、重病患者が奇跡の回復をしたっていう!


光人間や空飛ぶ正体不明の魔法少女と



・・・・・・・・



「あっーーーーーー!!!!!」


「うわっ、びっくりしたなぁもう、君は昔から落ち着きがないのが欠点だけどまだ直ってなかっ・・・・・・・・・」




魔法少年だったんだあれ!?

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