第54話 社畜の生活


私は田辺小百合、ただの25歳の会社員


「25歳で会社員」ってのはエネルギッシュな単語だと思うが私はそうじゃない



大学時代はまだ良かった


適度に働いて、適度に結婚して、適度に将来を過ごしていく


そんな将来への期待はあっても不安はそんなになかった



だけど社会に出て様々な問題がでてくる


お給料・税金・人間関係・年金・職場・残業・大人としての付き合い・洗濯・ご飯・貯金・お金の管理・残業・休日出勤・残業・残業・残業・残業..............


今日も汗臭い課長の、長くて、意味も内容もない説教を聞きつづける



「田辺ぇ!まだできてないのか!!使えねぇなぁ!!!俺が若い頃はなぁ」



そんなにいやならやめればいいって言葉がある


そんなことを簡単に言えるのは社会的地位があってお金に余裕がある人間、もしくは実際にブラックから抜け出して成功した人、それか世間知らず


もしもここをやめたとして、その後どうなるか誰か保証してくれるのか?



「聞いてんのか!?」


「はい」



転職に失敗したら「やめればいい」なんていえず「辞めるんじゃなかった」っていうことになる


もちろんそんなうまくいってない人間のセリフは誰に届くわけでもない


届いたところで「努力不足だ」とこき下ろされて終わりだろう



他力本願に無責任に「じゃあ誰か私を助けてよ!!!」って叫びたくなる



でも私を助けられるのは、何をするか決めるのは私しかいない、いや、もしかしたら誰かいるかもしれないけど


やりがいもなく続くこのブラックな仕事だっていつか私が上達したらなんとかなるかもしれない、人が増えればましになるかもしれない、悪い面だけじゃなくいいところも見ないと、だけど



また一人、会社から居なくなった・・・



「たくっ!根性がねぇな!!田辺!やっとけよっ!」



とにかく働くんだ、働けばとにかく生活を維持できる、私さえ、今さえ我慢すれば良くなるかもしれない


残業代は出る、でても給料全部で25万ほど、ここから色々とひかれてる


明細に記載された残業時間がおかしい


月の残業時間が300時間とか普通じゃない


深夜2時まで職場にいて朝6時には起きないといけない


最近は車も壊れて直しに行く暇がないから電車なんだけど終電に間に合わないからビジネスホテルに行く、たまに深夜の入浴施設にも行く


シャツや下着は会社のロッカーにためてるし月1でまとめて持って帰ったり、もしくは捨てる



「田辺!こんなことじゃ接待やっていけねぇぞ!ほら、俺に酒つげ!気が利かんなぁ!!ほらお前ものめのめ!あ?飲めない?上司の言うことが聞けないのか!!よーしそれでいい、店員さーんピッチャーでもう1杯、いやこいつの分も含めて2杯!」



最近食べ物の味もわからない、苦痛でしか無い飲み会を乗り越えられた


課長は部下の車でグーグーいびきをかきながら帰った



明日も朝一かぁ・・・



今日もビジホに行く、いつものビジホとは違って受付が私好みの少年


そろそろ暑くなってきたとは言えノースリーブと短パンの美少年、最高に眺めていたい


部屋に案内してもらうといつもよりも狭い部屋、ベッドさえあればそれでいい



それより・・・・



欲望の限りを尽くしてスリスリナデナデぎゅってした、これ夢だ!


夢とは言え最後までしなかったのは我ながらヘタレだからと思う、少年とは愛でるものだ!!!


かわいいぬいぐるみとお話したり最高の夜だった、ような?起きるともう出社まで時間がない


座って寝てる男の子の膝の上から飛び上がって、カバンをひっつかんで出る



ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!??



あれ?男の子いる?寝ぼけてんのか私?



出社しておかしな点に気づく、いつものだるさや辛さがない、体が軽く、世界がいつもよりも明るく見える


昼過ぎに来た課長だがタイムカードを見て説教される



「たるんどるぞ!」



始業30分前にはタイムカードを切らないといけない、給料は出ないがその時間に会社にいるっていう証明だ、今日は27分前についた


いつものように意識を別のところに現実逃避した



昨日の夢、あれ本当だったんじゃないかな?


さっき昼食を買おうとして財布がないことに気が付いた


若く見えるホテルマンだったのかな?それとも連れ込んじゃったかなぁ・・


忘れたか抜き取られたかわかんないけど取りに行かないと、保険証入ってるし



「お前の代わりなんかいくらでもいる!やめちまえ!!!」



いつものように飛んでくるツバ・・・じゃあ



「じゃあ辞めるよ」


「あぁん?いまなんていっ」


「辞めるっていったんだよ!上司命令だからな!訴えるから覚悟しとけ!!!じゃあな!」



呆けた課長の顔が小気味好い


いつもなら絶対にすいませんって謝罪マシーンだった、だけど今日はもう口から出てきてしまった


いつものようには我慢できなかった


なんだろう、今日は朝からスッキリした気分だったし1日ずっとその気分を邪魔されたくなかった



「んー!財布見つかったらスイパラ行くぞぉ!!」

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