第51話 鬼監督黒葉姐さん誕生


茂木さんに支えられてなんとか私はビルの中にはいった


息をなんとか整え、中で声がする方にふらふらと進む



・・・地下格闘技みたいなことをやってた、ここ一階だけど



中に入るとみんな神官様の方を見てて私には気もついてない様子だ


金網デスマッチのように中には4面に光る壁があり、身長160センチはない神官様に対して2メートルはありそうな、それも体格が良く肉厚で重機の代わりができそうなマッチョな男が襲いかかっていた


私は普段なら「スマホで警察を呼ばなきゃっ」て思っていただろうがボーッとそれを見ていた


なぜならヤクザさんのお宅であの神官様は目にも留まらぬスピードで動いていたし人1人が天井にぶつかるようなパンチを使うことができていたからだ



「・・・・危なっ」



見ていると短刀を取り出した男が体ごとぶつかりに行った


一瞬ビックリしたがお腹に刺さったかに思えたナイフは片手で止められ、なんとナイフをつまんで玩具のように先端から折っていた


鉄ってそんなにポキポキ折れるものだったかな?





「そう よ、・・・・僕は  勇 だ」



神官様がなにか言って大男が人形のように吹き飛び、光る壁デスマッチは終わった


神官様はポンポンと裾を払って私に笑顔を向けた



「これからはそこの黒葉さんに皆さんの管理を任せるからよろしくね」



何を言ってるかわかんない、怖いヤクザさんたちの視線が私に集中する



「返事は?」


「「「「「「へいっ!!!」」」」」」



ぴぇっ!!???



私を確認したヤクザさんたちは私に揃って頭を下げた


茂木さんが丁寧に接していたヤクザの親分っぽい人もだ



「じゃあ黒葉さん、とりあえず頭に隷属の刻印入れてる人達を連れてビルの中と外を掃除してもらえるかな?このビルもらったばかりで4階の僕の寝床もそうだけど掃除あんまり上手くいってなくてさ、この服に着替えさせてから」


「むむむ、無理ですぅ!!!!!」


「大丈夫、悪さしようとしたら頭が絞まるからね、これも使う?」



ぼろぎれのような服、それと、明らかに人を殴る用途の棒がでてきた


中世?中世の刑罰用?いっぱい出されたが明らかに使い込まれたものもあった



「ぴゃっ!!!??む、むむむりですぅ・・・」


「じゃあこれだけでも」


「ここ、これは?」



渡されたのは指輪、指輪ァ!!!??


金色で細かな装飾が施された、明らかに高そうな指輪、ブローチ?



「守護の指輪と精霊の宿るブローチです、厳し目の精霊が入っているので勝手に働いてくれます」



人からこんなに高価なものを渡されたことはない、アクセは身に着けないほうだし

ましてや



・・・・・男の人から!!?


相手は明らかに年下なのに胸がどきどきしてしまう、男の人からプレゼントなんて貰ったことがない


ましてや高そうなアクセサリーなんて・・・!!



と、とにかく言われたことをしよう・・掃除・・・掃除道具は?



「えっと、どこからどこまでを掃除すればいいんですか?」


「このビル全部、それと外も少し」


「は?」


「レアナー教のだからね、鍵は4階の僕の寝床に全部あるからとにかくスーツからこれに着替えさせて、道具も出しとくから、わからないことは言ってね、徳田たちをこき使ってね、一応これもっといて掃除にも使えて便利だよ」



渡されたのは白い鞭だ、それもすごく長い


いやどう使えと?



「まずは何をすれば?」


「ひゃっ!?」


「まずは何をすれば?」


おじいちゃんぐらいの人に「何をすればいい?」なんて聞かれたことはない


徳田さんにみんなしたがってように見えるし一番マトモそうな徳田さんに・・嫌でもこの人元組長だよね?一番危険人物だよね、良いのかな



「そ、そそ、掃除しましょ・・う・・・・」


「へいっ!おまえら!着替えて掃除だ!!」


「「「へいっ!!」」」


「バカ!お嬢様がいるんだぞ!別の場所で着替えやがれ!!」


「すいやせんっ」



ひぃ~~~~



「と、と徳田さんはついてきてくだせぇ」


「へい!」



4階まであるエレベーターを使う、さっそうとボタンを押してくれる徳田さん

お互い無言、気不味いが降りて部屋を探す、雑居ビルだがどっちだろ


上と下に行く階段・エレベーター・4箇所のドア



「・・こっちはあっしが見ます」


「はい」



機敏に動く徳田さんに少し、いや、かなり戸惑ってしまう


すぐに部屋はわかったが驚いた


充電器、鍵、それと藁とシーツ・・・一体どんな生き方をしてきたんだ


寝落ちするまで聞いていた神官様の異世界話は本当だったのかもしれない



「少し話しやしませんか?」


「は、はい」


「あっしはもう死ぬだけでした、それにうちはヤクザ家業とは言え今日日ヤクザなんてアコギな商売をせにゃ儲かりません」


「・・・・はい」


「あっしはそれが大っきらいでしてね」



驚いた、ヤクザといえば悪の象徴だ


それもあんなに柄の悪い連中のボスが?本当だろうか?



「え?」


「食うに困ったもんを拾って、いつの間にか立場がついて親分なんて立場になりやしたがずっと堅気に憧れましてね、あっしのことはいいです、困った奴らですがよくしてやってくれるとありがてぇ」


「・・・・私は、友達が癌だったので治してもらいたくて、このビル、に、来ました」


「茂木に聞きやした、すまねぇことをしました」


「い、いいえ、私は友達のために何でもするって言っちゃったんです、それでここにいるんです」


「御友人は?」


「・・私が何をするまでもなく治してもらってました」


「ならここにいる意味はあるんですかい?」


「わかりません、でも、私は友達のために言ったことを嘘にしたくないんです、うっかりでた一言でした、今日だけかも知れません、でも、自分で言ったことですし、神官様のためなら頑張ろうと・・思った、です」


「・・・立派です、さて、話が長くなりやしたが早く戻って奴らをこき使ってやってくだせぇ」


「わ、わかりまちた」


「・・・・」



とにかく指輪を左の人差し指につけ、ブローチを似合わぬ服に無理やり付けた

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