第43話 黒葉さんと脱出


黒葉さんをはるねーちゃんのところに連れて行くことにした


魔道具[カジンの捕縛布]で黒葉さんを背負って後ろにくくりつけた


すごく大変だった、意識のない人を動かすのって難しい


はじめはいつものように杖に吊るしてたんだけど飛び上がってすぐに色々と引っかかりそうなことに電線に当たりかけて気が付いたからこの形にした


日も暮れてくると電線が結構見にくい、みんな邪魔じゃないのか?これ


空からねーちゃんの今いる病室を見ると目があった



笑顔でちょいちょいと「こっちこい」の合図をされる



なんだろ?怒られる気がする、僕なにかしたっけ?


屋上までついて黒葉さんをおろす、杖と僕とでぐるぐる巻きにしてたしけっこう慎重にだ


すぐにはるねーちゃんがきた


いつもの病院の服ではなく私服でだ、さっき見たときは病院着だったはずなのに

腰まである艶やかな黒髪が白いワンピースによく似合ってる



「あんたまたやらかしたでしょ、いま大変なことになってるってわかってる?」


「え?そうなの?」



なにかした覚えはないんだけど



「それよりなにそれ?」



僕の後ろを指差したはるねーちゃん、僕の後ろにはぐるぐるとミイラのようになった塊がくっついている


僕よりも背が高いし僕は動きにくい



「黒葉って人、ねーちゃんの友達で合ってる?」


「えっ?奈美!!?」



[カジンの捕縛布]は魔物の繊維と希少金属の織り込まれた薄灰色の布だが魔力で自在に動く便利な道具だ


それのトゲ無しの手持ち4枚全部を使って黒葉さんは後ろでミイラのように、いや玉のように固定して運んだ


いつも長距離を【飛翔】するときなら杖に挟んで椅子にするし獣の捕縛にとても便利、だけどちょっと獣臭い



「なんかいろいろあって、ねーちゃん治してほしいって来てて色々あって」


「あんたはまたぁ!!いいから私も奈美と一緒に連れてって!」


「病院はもういいの?」


「とにかく早く!」



杖に僕がのって後ろに黒葉を縛り付け、ねーちゃんは前



「じゃあねーちゃん横向きね、捕まっててね」


「え、さっきのあんたみたいに横向きに座ればいいじゃない」



さっきまでは僕が斜め向きに座って後ろに黒葉玉を固定してた


急に起きて暴れられると前向きだと後ろ向くの危ないし対応しやすかったからだ


だがねーちゃんも乗るのなら真ん中の僕は前を向いてねーちゃんを抱きかかえた方がいい



「黒葉さんのこと見れるようにね、でもそれだとはるねーちゃん危ないからね、黒葉さんは玉のまま固定するし起きたら僕越しにはるねーちゃんが暴れないように言えるでしょ?それにねーちゃん空飛ぶのなれてるの?結構危ないよ?」


「うぅ・・あぁ、でも」



なぜだろう、ねーちゃんは赤くなってモジモジしてる


いつものねーちゃんならこれが電気あんまだ!とかこれがコブラツイストだ!とかやってきたり、脇のところで僕を抱えてぐるぐる振り回して笑ってたのに



「あぁ!いたっ!!春日井さん!いました!!」

「捕まえろ!!」

「こっちだー!!!」



バンとドアが開き、看護師さんやお医者さんが来た、どうしたんだろ



「あぁもう!わかった!!」



僕の膝の上でねーちゃんが右を向いて座り、僕はねーちゃん越しに右手を杖の前の方を持ち、左手ではるねーちゃんを抱っこして【飛翔】した


ねーちゃん成長したんだな、色々と柔らかいし、背もはるねーちゃんのほうが大きい


なんかいい匂いもする



【飛翔】の魔法を使う


ぐぐっと杖が持ち上がり体が浮かび上がってくる


二人も乗せるとやっぱり重たいな



「お、おおおおおおおお!?」


「しっかり捕まってね」




「まてやぁぁぁっっっっっ!!」

「魔法使いもいたぞ!!!捕えろぉ!!!」

「こっちだー!捕まえろぉー!!!」



横からすごい怒号が聞こえるがそのまま飛び立つ




「はっはっはっはっはっはっはっはっは!!!洋介!飛ばして!!!」


「はいはい」




はるねーちゃんはジェットコースターのような絶叫マシンが好きなのだが叫び方が女の子らしい「きゃー♪」ではなくよく笑う、すごく楽しそう


下を見るとカメラでパシャパシャ撮られてる?ちょっと杖を強く握ってスピードを上げる



「きゃっ!?ふふ!ははははは!!夢見たーい!!!!」



杖を強く握るとねーちゃんはもっと近づいてきて力強くしがみついてきた


調整調整・・僕はお尻が痛いので早く降りたいのだが・・・



とにかく、ねーちゃんは楽しそうだ

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