第38話 部下の処遇
「徳田堅といいます、ケチなヤクザをしております」
徳田さんというのが茂木さんのお父さんかな?
僕から少し離れて畳にあぐらをかいたこの老人、明らかに病人
点滴をしてるのもあるが痩せて細い
己の死の直前に立ち会ってるもの特有の諦めたような弱々しさはない、むしろ逆で目だけは力強い
茂木さんは徳田さんの後ろに立っている
剣をおろして向き合う、畳に剣先が刺さるがそこは知らない、ちょっともったいない気もするが
「あっしらの子分共が大変な無礼を働いたようで、けふっゴホッ!」
「親父!」
「引っ込んでろ」
この徳田さん、今にも死にそうだ
老人が死にそうなのは少し胸が痛む
「・・襲いかかってきたから打ち据えた、賊であるなら始末するべきだ・・・と思ってたんだけどちょっと迷ってる」
「というと?」
「ヤクザってのが暴力団で、反社会団体ってのは今知った、賊は殺すべきだと思う、だけど、このおねーさんに止められて迷ってる、女神様も止めないし間違ってはいないはず」
<信徒にするはずだったのに、ちょっとだけもったいない気がするですぅ>
「女神様はもったいないっていってる、ちょっとだけ」
たしかにもったいないって部分は自分でも思う
向こうでは賊に人権なんてなかった
ただでさえ魔物が闊歩し、善神側は押されてたのに賊徒は暴れまわる
戦闘があれば生き残りはだいたいはその場で殺すし、連れ帰っても奴隷として死ぬまで過酷な労働刑を科す
愛を司る女神様は「愛を妨げるもの」には容赦がなかったし、命を奪う賊なんてその最たるものだ
神様がもったいないっていうのならこの人たちは賊になりきれない半端者が多いのだろう
こちらではまだ金もない、労働力もない、権力もない、人手もない
あるのは最高の女神様と僕の神聖魔法それと常識だけだ、いや、それとビル
労働力として使えるかな・・?うーん
「あっしに免じて許してもらえませんかね?何ならこの首持っていってもらっても構わねぇ」
「いや、部下を御しれなかった俺の落ち度です!やるなら俺を!!」
「黙ってろ!!」
「だけど、親父・・」
女神様はふよふよ浮いて僕を見てるだけ
基本的に女神様はこういう選択に口を挟まない、そもそも見えないし聞こえない
結婚や恋愛、慈愛家族愛には口を挟んでくるが、いや、お菓子や食べ物にも口を挟んでくるけど
「じゃあこれから言う条件を守るなら手は出さない」
襲いかかってきたものの財産は全部没収、反社会団体としての活動はやめてレアナー教の軍門に下り隷属すること、レアナーの教えを受け入れ布教に協力すること、家族を愛すること
隷属は過酷な労働や魔物への死を厭わない突撃もあった
賊は殺さないならせめて人類の役に立ってもらわねば
甘いことは言わない
「それができるなら殺さない、もしも守るのなら衣食住、それと治癒と愛は保証する」
「わかりやした、あっしは軍門に下ります、ただ・・・」
「ただ、なんです?」
「こいつらにもそれを聞いてもらってもいいですかい?」
「もちろん」
ひとりひとり聞いていき、話はまとまった
徳田、組長さんは襲撃してきた暴漢共のボスだ
初めはボコボコにした人たちとこの徳田さんたちは関係のない人かどうかとかわからなくて手加減したんだけど頭領だった
責任をもって殺そうかと思ったがそれもまた女の子に止められたし徳田は僕に従うと言った、襲撃者の全員も快く了承した
死とどちらかという選択肢だったからまだ心の底では従ってない可能性もある
向こうだとこんなことで魔法を使うことは魔力がもったいなかったが今ここにいる20・・何人かぐらいなら大丈夫だろう
27人分【隷属】の魔法をかける、まとめてかけられないから手間がかかる
組の解体についてとかを徳田と話し合ってる茂木さんは結構うるさい
すぐに連絡の取れないものや組の解体とかで残りをまとめるのに茂木さんにはなにもせずに組に残ってもらった
うん、信徒じゃないけど労働力は確保できたね!
とりあえず大福も全部収納した
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