第一章 レク・サレムと冒険者ギルド
第一節 不穏な依頼 1
入学式のあった翌日。イ私はヴネリアと話した通り、レク・サレムに入学した件をマスターに伝えるべく冒険者ギルドへと足を運んでいた。
「それじゃあマスター今日は夜まで帰ってこないんですか?」
「そういうことです」
しかしカウンターでマスターに取り次いでもらおうとしたところ、今日はなんたら会議がどうこうとかでいないらしい。なので私がまた今度でいいかと諦めて帰ろうとしたところ、今度は受付嬢の方から声を掛けられた。
「あ、お待ちください爆炎様。実は爆炎様に紹介したい依頼が届いておりまして…………」
「…………」
私に紹介したい依頼?これまためんどそうな…………というか、爆炎様って呼ばれるの未だに慣れないな。
「ええと…………依頼主はミュース伯爵で、娘がどうしても街の外に用があるというので、その護衛を依頼したいということなのですが」
「護衛…………」
護衛依頼。それは、私が特に避けている依頼のうちの一つだ。
何か失敗した時の責任とか凄そうだし、私はそういう重圧のない、採集とか討伐みたいな私が失敗しても代わりがいるような依頼をやっていたいのだ。
「この依頼、報酬は破格なのですが…………なにぶん目的地が明記されておらず、しかも女性限定なのですよね。それに、娘と同い年程の人じゃないとダメだと…………」
「その娘さんは?」
「今年で十四だそうです」
十四歳の女性冒険者なんているわけ…………ああ、私か。
いやいや、私のことを知っていたなら指名依頼として出せばいいはずだ。だとしたら、そのミュース伯爵って人は私のことなんて知らなくて、無理難題としてこの依頼を出したってことになるんじゃ…………受付嬢の言葉伝いだけど依頼内容も伯爵本人は反対してそうだし、ここは…………
「護衛依頼はちょっと…………」
「わかってます。爆炎様が護衛依頼を避けているというのはわかっているのですが、受注条件を満たしている冒険者がいるのに伯爵様の依頼を断るというのもギルドの体裁としては…………」
その伯爵様も受注されることを望んではいないと思いますけど…………などという憶測を語る気はないが、この依頼を受けるのもめんどくさい。
ああめんどくさい、めんどくさい。めんどくさいなあ、ほんと。私に期待なんてしないでほしいのに…………なんて、マスターにお世話になってる身で言えたことじゃないか。
「わかりましたよ。いつですか?」
「本当ですか!?ええと、受注者が現れたらいつでも訪ねてくれという言を預かっておりますので、爆炎様からミュース伯爵宅を訪ねて頂くことになるのですが」
「うげ…………」
やっぱり請け合うんじゃなかった。と後悔しながら、私は絶対にいつか冒険者なんて辞めてやると決意を固めたのだった。
──────冒険者なんてもっと気楽なものだと思ってたのに。
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