第11話
11話
「それじゃあ、自己紹介も終わったことだし皆のダンスを見せようか。」
すると、待っていましたと言わんばかりに、直ぐ曲を流し始めた。
この少人数では広すぎる部屋で罪悪感があるほどの音量で流すその曲は、脳へ直に入ってくるような体が振るえるような、俺を音楽の世界へと流し落とすようであった。
すとん。と。それはおじさんに指導をしてもらった時とは違って、恥じらいが無いと言うか。この少人数で学校の人という要因が俺の本来の行動を支えてくれる気がする。
「まず、誰から行こうか?」
「・・俺・・踊りたいです。」
だから、思わず言ってしまった。この瞬間この意識で踊りたいと、そう強い気持ちが芽生えたからこそ。
「・・・いいけど、最近始めたって聞いたけど大丈夫?」
「知っているムーブだけになるから、不格好になるかも知れないです。」
それでも、体がリズムを刻み俺を踊らせようとしてくる。どれだけ不格好になろうと、踊りたいという気持ちが強くなってくる。
早く踊りたいと。
「うん、不格好でもいいよ。僕たちはどんなダンスを踊るのか見たいだけで、ムーブを見たい訳では無いんだから。」
「ありがとうございます。」
その沸点を超えそうなほど煮えたぎった体が、ダンスが出来ると言われた瞬間解き放たれた。
一歩二歩三歩と
真ん中に向けて足を運んでいく。その足が前に出て行くほど、熱くなっていた体が冷めていく。・・・でも、それは恥ずかしいと振り返ったからではない。
冷静になったのだ。その暴走しそうな体・脳みそはドンドン冷めていきどんなダンスを、ステップをするのか浮かんでくる。
今はまだステップしか出来ない。上半身のムーブはまだ知らないし、やったこともないからだ。だからステップだけでこの曲を表現する。
それは、おじさんの所でやったダンスと同じで。でも、また違うような。
「凄いじゃないか!」
俺はステップしかできない。だからこそ、何も出来ない上半身は捨てて、ステップ以外何も考えない。
だからこそ、・・・この楽しいが表現できたのではないだろうか。
・・・今自分がどんなダンスを踊っているのか何となく分かる。おじさんの所でやったような、ダンスではあるが何も感じない。おじさんの様な楽しい感じが全くない。そんなダンスとは違い。
今は俺が思っていたような楽しいダンスが出来ている気がする。
「じゃあ!次は私が行こうかな!」
俺のダンスの披露が終わると、変わるように直ぐに未夜さんがはいってきた。・・・美代さんのダンスは、その俺と変わる瞬間から緊張と言う文字が見えないような、足取りで入って行った。
大会に出ていると聞いているから、そう言う皆の前で踊るのはなれているのだろうか?
そうおもって、未夜さんが踊りだすのかとおもったら、曲が丁度サビに入ったのか、俺が思っていた曲調とはまた違ったものとなった。
だが、それが分かっていたのか、知っていたのか変わった瞬間から踊りだした。その踊りは・・・まだ調べきれていなかったのか、知らないダンスで会った。
でも、しなやかな様子でそのダンスは「自分の世界」に引きずり込んでくるような。
「彼女は元々バレエをやっていたみたいでね。・・・筋肉の使い方、そして、足から来る表現力は格別だよ。」
バレエの事は良く分からないが・・・目の前のダンスにはバレエの経験が入っているからここまでの表現が出来ているんのか。
・・・そのダンスは音楽であるかのような。音楽を具現化したかのようなダンスで会った。そこに俺が求めていた楽しさなどはなく。そこにあふれる表現は、音楽が醸し出す雰囲気と同じものであった。
音にハメるとはとはまた違う。全てを合わせた《・・・・》ダンスで会った。
「・・・ふぅ。うん。楽しかった。」
そのダンスが終わったのは曲が丁度切れた時であった。
「次は佐々木くんお願いね。」
「分かりました。」
そう言い、曲が始まる前に前に立って待機をしている。・・・曲が流れ始めたと同時に、その曲の入りにハメてきた。
カッカッカッのリズムで出されたその、体を振るわせるムーブは俺を釘ずけにしてしまった。
ポッピンのヒットというムーブだと思うが、そのムーブを単体でやっただけでここまで魅せられるのは、この人の特徴なのだろうか・
「佐々木君はポッピンが好きみたいなんだよね。・・・ポッピンんの事は良く分からないから、何もいえないや。」
そのダンスは特徴的と言えばいいんだろうか。ただ、ロックとはまた別物と言うか・・・あの体の動かし方は独特過ぎて、まだ凄いと言う事しか分からない。
でも、その一つ一つの動作が綺麗で、見本になる。
「じゃあ次は俺が行くぞ。」
その次は勝木さんがおどるみたいだ。ウキウキと前に出ると、慣れたようににステップをかましてきた。
何のジャンル何だろうと思ったその時、曲の何が変化を与えたのかダンスの種類が変わった。
そこでやっと勝木さんのダンスジャンルが分かった。
「勝木くんはパワームーブが好きみたいなんだよね。」
その大きな体から繰り出されるムーブは、ロックなどとはまた違ったみぃ力があり。そのダンスは迫力があった。
足を一回転させると、そこの雰囲気は凄いという物に変わる。曲に添って踊っていないのにだ。未夜さんとはかけ離れた、そして俺が知っているダンスとはまた違った力強いムーブである。
「次は三月さんおねがい。」
「はい。」
・・・俺と同学年であるからどこか親近感が湧くが、さっきの自己紹介の時ダンス歴は4年と結構長いことやっていると言っていた。この中では剣さんの次に長い。
すると新しく別の曲にするのか、スピーカーをいじっている。・・・俺にはあのスピーカーは、謎のコードとか捻る奴がいっぱいついていて触りたくない。なんかの拍子に壊れたりしたら、凄い額を弁償しなければ行けなさそうで。
求めていた曲を流すことが出来たのか、曲がさっきとは違いしっとりとした曲に変わった。
「彼女はね、ヒップホップを踊るのが好きみたいなんだよね。・・・そのヒップホップの中でも最近はR&Bっていう種類を踊っているね。
多分今付けた曲はそれ系の曲だから、踊ってくれるよ。」
剣先輩が説明してくれた事を聞いて見ていると、
・・・何と言う事か。そのダンスは俺が求めていた物が全面的に出されているではないか。
そのダンスは、パッションと言えばいいんだろうか。ダンス全体に感情が見えてくる。
それは、おじさんが見せてくれたロックよりも、、、比べるまでもない程、全面的に表現している。・・・さっき先輩が言っていたR&Bと言うダンスはこういう感情的に踊るダンスなか。
それが目で見て分かるほど、伝わってくる。三月さんは声を出していないはずなのに。
俺はそのダンスを見て、目が離せなかった。・・・そのダンスが情熱的で、感動的で、そして踊ってみたいと思った。こんなダンスを、体だけで思いが伝わるようなダンスを踊ってみたいと、思ってしまった。
「いいですね。R&B。」
ダンスが終わったその時、俺が思わず独り言のように剣さんに対して放った言葉。その言葉はどこに行ったのか・・・美月さんから返答が来た。
「!!!!ですよね!」
想定外からの場所から来たその言葉は、俺を思わずのけぞらせるほどの勢いであった。dさから、思わず
「そ、そうですね。」
そんな、目の前の情熱とは真逆の反応で返してしまった。だが、それに気が付いていないのか。
「そうだ!・・・一緒にヒップホップをしませんか。私色々な事を知っているので色々教えることが出来ますよ!」
その熱量は、ヒップホップの仲間を求めていたような。そんな溜まっていた物があふれ出てきたような勧誘で会った。
・・・ヒップホップには興味はあったし、やってみようかな。。。一応おじさんから毎日練習するメニューを貰っちゃっているから、ロックの練習は平行してやる事になるけど。
それでも、、部活やめたし時間は有るから、。
「お願いします。ヒップホップには興味があったんですよね。」
「ありがとうございます!それならこの後一緒に練習をしましょう。」
ありがとうございます?
俺が受ける側なのに、お礼を言われてしまった。・・・
「仲良くなれたみたいだし、そろそろこっちを向いてくれないかな?」
それは困ったように俺たちの会話を聞いていた、剣さんの言葉であった。・・・思わず話していたけど、まだ剣さんのダンスを見ていないんだった。
「・・・うん、それじゃあ僕の番と言う事で踊らせてもらうね。一応先の説明しとこうか。今回僕が踊るのはブレイキンって言う結構人口が多いジャンルの中の、フットワークをやらせてもらうよ。」
すると、掛けた曲に合わせて勝木さんとは違い、片手を地面に置いた姿勢になっている。・・・すると何と言う事か、そこから繰り出される素早い足でリズムを奏でているではないか。
そのダンスはどこか魅力があり、見たことが無かったのでたにしかった。だけど、ブレイキンのフットワークやパワームーブはそこまで魅力的に見ることが出来なかった。・・俺自身やりたいと思わないからなのかもしれない.
「ふぅ。疲れた。・・・まあ、こんな感じでここにいる皆は、即興が好きなんだよね。だから、皆で合わせる大会とかは苦手で辞退している人ばかりなんだ。」
あ、そう言えば今ここにいる人全員がそれぞれ個性的なダンスをして、それに1人で踊っていたな。・・・たしかに、自由に踊るのは楽しいから、、、
「じゃあ、全員の自己紹介が終わったことだし、自主練に入ろうか。」
「「「はーい。」」」
すると、ダンスが終わるともう部活が終わったかのように解散してしまった。
「あれ?部活の練習を見に来たんですけど・・・。」
「・・・ああ、このメンツだと練習する内容が違うから全員一緒にとかはあんましないんだよね。だから、基本自主練。夏休みの間だけだけどね。」
あ、そうなんだ。
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