私の理想の王子様はあなたじゃありません!
かりん豆腐
第1話
小さい頃から絵本の中のお姫様に憧れてた。
煌びやかなお城の舞踏会で王子様に見初められて、沢山の人から愛されるそんなお姫様に。
ボロボロになるまで、何度も、何度も、読み返した絵本は私の大切な宝物。
私もこんな風になりたい! と思ってるだけだったけど、成長するに連れて、どうしたらなれるのか考えるようになった。
小さな頃の憧れはやがて目標に変わった。
「では、新入生代表 シャルル・アジェスティ、前へ」
「はい」
ここまで来るのにすごく大変だった。
お姫様になりたかったけど、私は平民。そのままじゃ逆立ちしてもお姫様にはなれっこない。
だから私は遊ぶことをせず、寝る間も惜しんで勉強した。
六歳のとき、教会で開かれてる無料の教室に通って読み書きを覚えた。一通り読み書きができるようになると、今度は近所のパン屋で手伝いと称してお金を通じて計算を覚えた。
十二歳位で簡単な計算ができるようになると、今度は設立されて間もない商会に出入りして在庫管理をしながら物の需要や流れを覚えた。
商会には私より三つ上のアレンという子供がいて、その子が本当に色々知っていて、考え方とかマナーとかちょっとした座学等、色々と教えてくれた。
商会の手伝いで評価されるようになってくると、見習いとして貴族の屋敷へと連れてってもらえるようになった。そこでアレンが教えてくれたように、貴族の女性が欲しがりそうなものを出せば飛ぶように売れて、たちまち商会は世界で五本の指に入る大商会へと成長し、支店もまたたく間に増えた。
商会の手伝いは楽しかったけど、十六歳になる少し前から学園に入ることを理由に、少しずつ手伝いの頻度を減らしていった。私が学園に入る頃にはアレンは会頭になってて、アレンも商会の人達もいつでも戻ってきていいと言ってくれた。商会の人達はみんな優しい。
私が勉強に重きを置いたのは理由がある。
それは貴族の令息、令嬢が通うという王立学園に通うため。
この学園はほぼ全ての生徒が貴族の子供だけど、唯一特待生になれば学費免除の上、平民でも通うことができる。さらに、特待生は書記として生徒会に席が用意されている。
生徒会長はこの国の王子様。王子様に見初められるために頑張ってきた。このチャンスを無駄にしない為に私のことを覚えてもらわないと。
決意を新たに、新入生代表スピーチを披露した。
入学式の後、事前に発表されていたクラスへと向かったはいいが、珍しいものを見るような、或いは蔑むようなそんな視線が私に突き刺さっていた。
まあ、そうなるわよね。
貴族の中に平民が一人だけ。直接嫌味を言われないだけマシよ。
居心地の悪い思いをしながら大人しく図書館で借りた本を読んで過ごしていると、鐘の音と同時に女生徒に受けが良さそうな若い教師らしき人が入ってきた。
「静かにしろよー お前らの担任のドルトだ。とりあえず、前の席のやつから自己紹介するように」
先生の一言で前に座っている人から順番に自己紹介が始まる。
一番後の列の一番端の席だった私の自己紹介は最後にまわってきた。
「シャルル・アジェスティです。よろしくお願いします」
無難に自己紹介を済ませると、あちらこちらから平民という言葉が聞こえてくる。
これくらいでヘコたれてたらお姫様になんてなれっこないわ。
「あー。一つ言っておくが、学園内では平等だ。もし学園内で権力で脅されるような事があったら俺のところに来るように」
先生の言葉に教室がざわつく。
学園内では平等って建前じゃないの? なんかあったら先生に言いに行けば何とかしてくれるのかな。うーん。わからないけど一応覚えておこっと。
「それからシャルル・アジェスティ、これが終わったら生徒会室に顔を出すようにと伝言だ」
「はい」
ついに! 本物の王子様をこの目で見ることができるのね。
自己紹介の後、いくつか学園生活での注意事項を説明され、解散となった。私は期待に胸を膨らませて生徒会室へ向かう。
生徒会室という割に装飾の凝った扉をノックする。
「シャルル・アジェスティです」
「どうぞ」
返事が返ってきてから入室すると、中は生徒会室というよりは豪華なサロンのようになっていいた。
「待ってたよ。君がシャルルだね、私は生徒会長のフリード。シャル、君の生徒会入りを歓迎するよ」
本物の王子様はやはり手入れが行き届いていて、制服を着ているのにどこかキラキラとして見える。
「入学式お疲れさま。僕は会計のミハイルだよ。よろしくね!」
「副会長のリーゼ・ベルモントですわ」
ひと目で貴族の令嬢とわかる仕草。髪や爪もツヤツヤしてる。勉強では負けるつもりはないが、育ちという面ではやはり差が出てしまう。
フリードがシャルルの愛称を呼んだことであれ?と思った。
アレンが貴族は簡単に愛称を呼ばない。って言ってたけど、先生も平等だって言ってたし、もしかしたら学園内では違うのかな。
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