第13話 桜の木

■桜の木

◉妹、姉

◎シンプルな一人暮らしの部屋の中。妹が桜の木が映った一枚の写真を手にしている。

写真の裏に、「今年は綺麗にさけました」の文字。


妹 「あはは。お姉ちゃん、また何か描こうとしたんだ」

写真の四隅に不自然に塗られた赤黒いインクに目を止めている。

妹 「いつもなら、捨てちゃうのに珍しいなぁ……」

妹 「うーん。これが一番上手く行った写真だったのかなぁ」

妹はしばらく写真を眺め、スマホを取り出す。

妹、姉に電話をかける。

妹 「お姉ちゃん出てくれるかなあ」

4コール目。姉、電話に出る。

姉 『もしもし』

妹 「お姉ちゃん! 写真届いたよ、ありがとう!」

姉 『よかったー。ちゃんと届いたんだ』

姉 『実は、切って貼り忘れちゃったかもーって不安だったんだよね』

妹 「あははは。去年の冬だっけ? あの時はびっくりしちゃった」

姉 『ご迷惑おかけしました』

妹 「いいって、いいって。それよりも、お姉ちゃん元気?」

姉 『えー? 何突然、元気だよ?』

妹 「そっか、ならよかった」

姉 『もしかして、それいうためだけに電話してくれたの?』

妹 「他に何かある?」

姉 『わかんないけど』

妹 「もー、なにそれ。こっちでもまたいい感じの写真撮れたら送るね!」

姉 『待ってるよー!』

妹 「とびっきりの、送るからね! それじゃ、また」

妹、姉に返事をし電話を切る。部屋の奥からファイルを一冊取り出し、写真をしまう。

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