第3話 大魔王の弟子となる
「ほほほ、よしよし大地にグランが満ちておるな」
子どもは満足そうにうなづく。
「......さて帰るか」
「......そうね」
オレたちはスタスタ帰ろうとする。
「待つがよい。
大魔王と言うとるだろうが、ほうっていくでない」
「ほんとなの? メルア?」
「魔族には違いないわ。
でも魔王なんてまゆつばね。
魔力もシンジより少ないし、封印されてたのなら昔は強かったのかも知れないけど、今はほとんど無害だから、スルーよ、スルー」
「我は本物だ。
お主らは勇者カイの話を知らぬのか」
大魔王を名乗る糸目でポッチャリな子どもはそう言う。
「カイなら知ってるわ。
確か千年前、魔王を倒した勇者ね」
「じゃあ、お前本当の魔王なの」
「そう言うておる転生者よ」
「おい! コイツオレのこと知ってるぞ!」
「......みたいね。
大魔王は嘘くさいけど、成長する前にとりあえずやっつけとくか......
シンジやっておしまい!」
「オレかよ!」
「かまわぬが、こんな姿の子どもと戦えるのか」
「フフフッ、その辺は心配無用。
オレは強きにはへりくだり弱きにはムダに強気なのだ!」
オレはそういうと剣をかまえる。
「いいわよシンジ!
それでこそ欲の固まりの下等な人間ね!」
メルアは応援?してくれる。
「どうしようもない奴らだな......
まあよい、さあくるがよい」
(とはいえ、軽くお尻蹴る程度にしとくか)
そう思ったオレが横に回って蹴りを放つ。
パンとお尻に当たるが子どもは平然としている。
その瞬間オレは殴られ吹っ飛んだ。
「ぐわっ!」
「なにしてんのシンジ!?
あんな子どもに殴られただけでしょ!
しっかりしなさいよ!!」
メルアが怒りながら言う。
(なんだ今の威力......
それに蹴ったときめちゃくちゃ固かった。
これは魔力をつかった身体強化か......
ならこっちも)
オレは身体に魔力を高めまとわせる。
魔力
それはこの世界の全てに宿る力、これに動作や性質を加えて魔法にする。
まとうことで身体強化することもできる。
その魔力をまとった身体で子どもに拳を放つが、簡単に腕で止められた。
「ウソオオオオ!」
また殴られぶっ飛んだ。
「あいつ!?
シンジそいつ少ない魔力を腕だけに絞って使ってるわ!」
「ほう、よく見抜いたな。
さすがくさっても妖精よな」
「誰が腐ってんのよ!
シンジこらしめなさい!
わたしのために!」
「なんでお前のためなんだよ!
だが、なるほど......
全体に使わず絞ることで少ない魔力でオレの攻撃を防いだのか......
よし! オレも!」
「......」
「......でも魔力をどうやってそんな風に使うの?」
オレはまた殴られ吹き飛ばされた。
「ダメだなお主。
グラン......
魔力もろくに使えぬのだな」
「仕方ないだろうが!
魔力を使うなんて最近始めたんだからな!」
「もういいわ!
アイテムも手に入ったし、そんなのほっといて帰るわよシンジ!
早く冒険者になるためにそれを使いこなさなきゃいけないんだから」
「ふむ、アイテムとな......
その剣グランドレインのことか......」
子どもは少し考え込んでいる。
「そうだよ。
お前を封印してたの抜いてやったんだからな感謝しろよ」
そう言ってオレたちが帰ろうとすると。
「待つがよい。
お主強くなるためにそれを使うのか」
「そうよ。
シンジは冒険者になる採用試験があるからね。
だからアンタと遊んでる暇はないの。
今日は見逃がしてあげるから、好きなとこにいきなさいな」
「......ふむ、よかろう。
ならば我がお主をきたえてやろう」
「本当? きたえてくれんの?」
「バカ!
そんなうさんくさい魔族かかわっちゃダメよ!」
「でもメルア、魔力もないのにコイツ強いよ。
教われば強くなれるんじゃない」
「まあ、確かにそうだけど......」
「ならば話しは決まったな。
我もついていくぞ」
「ああ、オレはシンジ、こっちはメルアだ。
で、お前はなんだっけ?」
「我はヴァルザベールだ」
「ヴァルザ......まあベルでいいか」
「うむ、まあよかろうて」
メルアが怪訝な顔をしているが、オレはこの自称大魔王ベルに教えを乞うことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます