『のぞみの許容』

 のぞみは許しを乞うてきた茶髪の手も切り裂いた。同じく鮮血が飛び散り蹲る。


「まだ私、させられてきた分しかさせてないけど? どうしてそんなに絶望しているの? ……そんなに絶望するなら、どうして私にそんなことをしたの?」


 冷たい目でのぞみに見下され、黒髪も茶髪も目に大粒の涙を溜めながら惨めに這いつくばり頭を下げる。手から血がたらたらと零れている。


「り、林檎に逆らえなかったの! 本当に悪かったと思ってる。でも……。の、のぞみの気が済むまで靴舐めるし、謝るから! い、犬とのセックスだけは許して……」


「そ、それだけは勘弁してください。それ以外なら何でもしますから……!」


 佐藤に罪をなすりつけながら頭を下げる黒髪と、墓穴を掘る茶髪。惨めったらしく頭を下げる二人を、のぞみは冷ややかに見下す。


「ふぅん、何でも? じゃあ佐藤みたいに背中カッターで切らせて、それからこのトイレブラシでゴシゴシさせてよ」


「ごめんなさい、ごめんなさい。それも勘弁してください。それ以外なら何でもしますから……」


「犬とのセックスもダメ。切られてゴシゴシもダメ。じゃあ聞くけど、貴方は一体、何をして責任を取るつもりなの?」


「ふ、服を全部脱いで、恥ずかしいけどちゃんと踊ったじゃない! ……ここまでしたんだからもう許してよ!!」


 茶髪は涙を流しながら逆ギレしていた。


「私は佐藤や貴方たちに全裸に剥かれて惨めに踊らされたことも、カッターで切られてたわしで擦られたことも、その汚い犬とセックスさせられたこともあるけど、でも貴方たちはどれも嫌。私にはしたくせにね。虫が良すぎるって思わないの?」


「でもっ、でも……」


「もう良いわ」


 泣き崩れる茶髪をのぞみは蹴り飛ばし、背中を向けさせてからカッターを振り下ろす。茶髪の白い背中から鮮血が飛び散った。のぞみはそれでも容赦することなく二度三度と切り傷を背中に作っていく。

 それから茶髪の背中を踏みつけ、ブラシでゴシゴシし始めた。


「あ゛っ、っきゃぁぁぁああああああ!! あ゛っ! あ゛っ! ひぃっひぃっひいっ」


 茶髪の絶頂が地下室にキンキンと響く。茶髪は過呼吸になり、それから白目を剥いて泡を吹いて倒れてしまった。のぞみは真っ赤に染まったブラシも、血で赤く染まった茶髪の背中も、血だまりも冷酷な視線で一瞥してから、黒髪の方に視線を向けた。


「ひぃっ、ご、ごめんなさい……」


「それで、貴方はその汚い犬とセックスするのか、それともカッターで切られるのか選んで頂戴?」


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


 黒髪は泣けば許されるとでも思っているのか、涙を流し、嗚咽交じりにごめんなさいを連呼する。だが俺は知っている。俺やのぞみは何も悪いことをしてなくても、なんとなくごめんなさいと言わされ続けて来たし、いくら謝っても凄惨な虐めの手を緩めて貰ったことなんてない。


 今まで平気で残酷なことをして、嗤って来たくせに、いざ自分が被害者になり始めると泣いて薄っぺらい謝罪を連呼し始める黒髪に虫唾が走る。

 のぞみも同じ気持ちなのかため息を吐き、それから黒髪を蹴り飛ばしてその背中を何度もカッターで切りつけた。血飛沫が舞う。


 それから黒髪の背中も、トイレブラシで擦り始めた。


「あっきゃぁぁぁあああああああっっ! あっきゃぁぁぁあああああああっっ!! あっきゃぁぁぁあああああああっっ!!! ひっひっひっひっひぃっ!!」


 黒髪の絶叫が地下室に響き渡る。それから黒髪も茶髪と同じく白目を剥いて気絶してしまった。傷口をデッキブラシで抉られるのは痛いだろうけど、それだけで気絶してしまうのは些か情けないようにも思えた。

 二人の股にはアンモニア臭い水たまりが出来ている。


「それで、その三人はどうするつもりなの? このまま捨て置けば死ぬと思うけど」


 別にそれはそれで良いような気がする。正直、俺はこいつらが死んだとしても心が痛まない自信があった。……婦警さんに疑われた件もあるし、俺が疑われる可能性はあるけど、この地下室は異世界にある以上証拠は絶対に出ない。

 デッキブラシやカッターナイフをこの地下室に捨てておけば完全犯罪成立だ。


「……正直、こいつらをただ治すのも面白くないのよね」


 のぞみは考える素振りを見せながら犬の方に視線を向けた。

 佐藤たちの非道な遊びによって、のぞみの処女を奪った犬であり、その犬はとても不潔で体液を散々漏らしている佐藤やその取り巻き達に負けず劣らず臭い。

 その犬はブルりと佐藤の傷口を舐めるのを止めて、身体を震わせていた。

 更に強烈な悪臭が漂ってくる。


 何だろうと思って見てみると、犬のお尻の辺りには大きな茶色い物体が転がっていた。のぞみは頬を三日月の形に歪めて嗤う。


「良いこと思いついたわ」


 そう言ってのぞみはデッキブラシに、佐藤の家の犬が出したばかりのうんこをたっぷりと付着させる。それから佐藤、茶髪、黒髪の順番で、傷口をデッキブラシでぐちょぐちょにされた背中に塗りたくられていく。


 あんなぐちゃぐちゃに傷口にそんなものを塗りつければ100%変な病気にかかる。しかもただでさえ不潔な佐藤の犬だとそのリスクは一入だろう。

 のぞみは心底愉快そうに頬を歪めてから、恍惚とした表情で俺の元に歩み寄ってくる。返り血に染まったのぞみは徐に俺に抱き着いてきた。


「ソラ。私、すっごく興奮しちゃった。ソラさえ良かったら、私を思いっきり犯してくれないかしら?」


 のぞみに体重を預けられ、耳元で囁かれる。正直俺も、不愉快ないじめっ子たちが惨めに謝り、それでも当然許されず血まみれになる様を見て興奮しなかったかと問われれば嘘になる。

 とは言え、こんな悪臭漂う地下室でのぞみを抱きたいとは思わない。俺は迷わず、自分の部屋に転移して、それから思いっきりのぞみの身体を貪った。




                   ◇



 激しくのぞみの身体を貪り、興奮が収まる頃には外の日も暮れていた。かれこれ一時間はしていただろうか?


「それで、あれはどうするつもり?」


「そうね。切り刻んだらスカッとしたし、それにソラに抱いて貰って充足した気分だから正直治してあげても良い気分になってるわ」


「そっか。それも良いんじゃないか?」


「ええ」


 のぞみは口が裂けそうなくらい悪い笑みを浮かべる。……絶対普通に治す気はないだろう。でも俺としてはあの佐藤たちがどうなろうとどうでも良いし、のぞみがどうするのか顛末を見届けたい気持ちもあった。

 俺はのぞみをつれて再びあの地下室に転移する。


 一度抜けて再び入ったからか、さっきはそこまでだったけど、鼻が曲がりそうなほど臭い。のぞみはつかつかと横たわって――もう死んでるんじゃないかと思うくらいぐったりしている三人の頭を踏みつけた。


「『ヒール』『ヒール』『ヒール』……っきっ! ふぐぅぅぅぅぅっ! ふぅぅぅっ! ひぃっ、はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ」


 のぞみは目尻に涙を溜め身体を蹲らせる。

 ヒールの反動でよだれと鼻水と涙で顔をぐちょぐちょにして過呼吸になるのぞみは相変わらずエロい。愛着が湧いてきた今でも、ヒールの反動で苦しんでいるのぞみを見ると興奮してしまう。


 俺はのぞみを後ろから抱きしめた。


「お疲れ様。こいつらはあのゲーセンの路地裏辺りに捨てておけば良いかな?」


「それでお願いするわ」


 俺は『転移』でこの三人を、三人と遭遇したゲーセンの裏に投げ捨ててから、のぞみと一緒に自宅に転移する。


「『ヒール』」


 それからのぞみは俺にキスをしつつ、精力を回復させてきたのでもう一回押し倒した。


 

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