Another⁇?

私は逃げ出した。

あの戦いから…。



命を張って戦う3人を残して。

満身創痍という姿の自分の魔法装甲を必死に動かして、戦場から遠ざかる。

魔法装甲の中では1人の女性が自身の行いを悔いながら…自問自答しながら操縦していた。




ニゲダシタ?

「違う!私はっ!」



魔法装甲内で通信する相手も居ないのだが、自分の中に浮かんでくる思いを振り切るかのように強く言葉を発していた。



ニゲダシタ?

「違う!私は悪くない!見捨てていない!」


ニゲタ?ミステタ?

「違う!私は命令されたから…」


メイレイ?

「そうだ…私はあの人達に命令されたから…」


ダカラミステタ?

「……見捨てていない!私は!」



さっきの戦いがフラッシュバックしてくる。

自分たちの軍は優勢な筈だった。

日本皇国に侵攻してきた敵をほぼ全て駆逐できたと思った。

しかし、突然現れた隊長機のような魔法装甲は圧倒的な強さでどんどん同僚達を無力化して行く。

トドメを刺されそうになった同僚を、私は硬直しながら見つめるしかできなかった。

それを止めたのは3賢者の駆る魔法装甲だった。

辛うじて動ける近くの同僚の魔法装甲は動かなくなった仲間を救出し撤退するよう指示される。

私はまだ戦えた事から3賢者の支援をしていたが、それも無駄だった。



『あははは!残ってるのは少しはやるみたいだけど…この程度かな?』

「ヒッ!」



嘲笑うかのような声が聞こえたと同時に構えていた剣が魔法装甲の両腕ごと宙に舞っているのが見えた。

それが、自分の乗る魔法装甲の腕だという事を理解するのはそう時間はかからなかった。



『さっきの雑魚よりは楽しめたけど…じゃあね』



敵の魔法装甲の武器が私を捉えているのはわかった。

しかし、私は動けず、ただ黙ってそれを見つめていた。




『馬鹿野郎!ボーッとするな!』

『君は良くやったよ』

『下がって、残った付近の住民の避難誘導を頼む!』



3賢者の魔法装甲が私の装甲に迫る攻撃を防いでくれていた。



「で、でも…」

『下がれと言っている!命令だ!…生き残れ』




その言葉に私は振り返る事もせず、一目散にその場を去っていった。

通信を切っていなかったせいか、その後に悲痛な3賢者の1人の声が聞こえていた。





ドン!

私の魔法装甲は物凄い衝撃があり、吹き飛ばされる。



「ウッ……」



私はたまらず意識を失う。

私が気を失う前に最後に見たのは、私が以前馬鹿にしていた魔力がない少年が駆る魔法装甲が敵の隊長機と思われる魔法装甲と互角に渡り合って戦う姿だった。





「ウッ…クッ……」



私が次に目を覚ました時は、日本皇国での戦いが終わった直後だった。

少し遠目に見えたのは、無惨な姿の3賢者が乗る魔法装甲の姿と、悔しさに打ちひしがれる様な姿を見せる彼の魔法装甲。




「負けたの…?」



周囲を見渡すが、被害はあれから広がっていない様子だった。



「被害は…?」



流れてくる、通信からはまだ混乱する状況がわかった。

それから少しして、私は少し入院した。

見舞いにきた同僚やテレビのニュースから怪我人などは出ていたが死者は幸い3人だけという奇跡的な数字だったと聞いた。

死者3名…そう、3賢者のみだった。

私は呪った。

何もできなかった自分を…。

私は恨んだ、自分の尊敬する上司の窮地を救う事が出来きず、生まれた国を守れず攻撃を許してしまった彼を。



「聞いているのか?和美?」

「…………あっ、ごめんなさい…」




ベットに腰掛ける私に話しかけていたのは五道隼人こどう はやと私の同僚であり、同期の装甲騎手。



「ごめんなさい。隼人」

「いや……。あんな所を間近で見たんだ、俺が無神経だったよ。また、様子を見にくるからゆっくり休んでくれ」

「えぇ…」




私の病室を後にする彼は何処か名残惜しそうに後にしていった。

その後、すぐ私は退院したのだが、私は魔法装甲に乗れなくなっていた。

乗ると手が震えて硬直してしまうのだ、それを受けて私は自ら魔法装甲を降りる事を決めた。

しばらくは自暴自棄になり引きこもる生活が続いていた。

自暴自棄になっていた時、世界では大変な事が起こっていたらしい事は後からわかった。

そんなある日、私は不思議な人物に出会った。



「あら…いい表情をしてるじゃない」



妖艶な雰囲気を漂わせるその人物は私にゆっくり近づくと私の頬を撫でる。

私はゆっくりとその人物と目を合わせてしまう。



「あっ……」

「私はこれから用事で反応があった遠くの場所に行かないといけないからねぇ。リコンの計画信用してないから、一応生きてたら詳しくこの世界の報告…してくれるかしら?」

「……は…い」



私は不思議と目を逸らせなかった。

それだけじゃない、私はこのお方の役に立たねばならない。



「あら?記憶を見た感じ丁度いいわね?可能だったら、彼等の懐に入ってちょうだいな?」



頭に手を乗せられた時見せられたイメージ。

それは、空飛ぶ戦艦とその部隊だった。



「はい…」

「フフフッ。お願いね?お人形さん?」




そう言って私の前から姿を消した、妖艶な雰囲気を漂わせる女性。




「情報を…集めなければ………」



和美は少し虚な表情を見せていたが、それは直ぐに収まる。




「……リアン様の為に」

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