第17話 キング
錬「しかし、どうしたものか…」
ルナ「倒し辛くなっちゃったね…」
気さくに話してくるベヒモスに錬もルナも戦意を喪失していた。
ベヒモスも同じようで、殺気も出さずこちらを黙ってみていて襲ってくる様子もない。
ルナ「このままって訳にもいかないよね?」
錬「そうだな…あちらさんが許してくれる感じはないだろうな」
錬は自分の後ろを見て言った。
錬「そろそろ、出てきたら?」
??「!?いつから気づいていた?」
突如現れた人にルナとベヒモスは警戒する。
錬「瑠衣様が来た辺りからかな?彼女から頼まれた?」
??「・・・・・・」
錬「沈黙って事は図星かな?」
ルナ「監視ってこと?」
錬「おそらく、ズルしてないか…あとは事実確認の意味でもって感じだろうな」
??「そこまで理解しているのか…流石だな。私の名前は影沼
ルナ「そうなればこのことも報告されるから、ダンジョン攻略は…」
錬「いや、そうでもないぞ?ベヒモス、宝物庫あるよな?」
『宝物庫?あぁ、変な扉の所か…この先にある』
少し歩いた先に宝物庫の扉を確認できた。
錬「まあ、主を倒さなくてもこの先にある宝を取れば解決するだろうし、瑠衣様も納得するんじゃない?」
錬たちは宝物庫に向かい中へ入る。
宝物庫には中央にポツンとサッカーボール程の大きさの玉が鎮座していた。
『せいめい…』
ポツンと呟くベヒモスを錬は聞き逃さなかった。
錬「それじゃ、それを持ってここから出ようか」
ルナ「あと、書物も一応持っていこう?」
錬「そうだな…。そうだ、ベヒモスお前…一緒に来ないか?」
賢吾「何を言って!こいつは魔物だぞ!」
錬「魔物だって一緒に暮らしてるのもいるだろ?それにこいつは言葉も理解もできてるから問題ないだろ」
『・・・・。私は認めた者しか従わない…。だが、錬とルナと言ったか?お前たち二人なら認めてもいい』
ルナ「ということは、ついてきてくれるってこと?」
『お前たちさえよければな』
錬「それじゃ、決まりだな!」
賢吾「全く…、君たちは想定の範囲を超えているな…。瑠衣様の言った通りだった…」
それから、回収するものを回収した後、ダンジョンを脱出した錬たちは皆が待つ東京へと戻っていった。
ベヒモスを連れていた事に驚かれたが、「まぁ、錬の事だから…」と片付けられた。
攻略したことの報告も済ませ、東京から地元へ帰る一行。
家に帰ると誠と
玲というのは誠の妻になった人物で錬の義母になった人だ。誠が錬を引き取る前に付き合っていたらしいが、錬を引き取ることとなった後に誠が一方的に別れを告げたらしいということを後から聞いた。
あきらめきれなかった玲はその後もアタックを続けていたらしいが、誠は断っていた。そんな誠も玲の熱意に負け4年前に結婚となった。その後、すぐに妊娠し女児を授かっている。名前は
朱莉が生まれてからも玲は錬やルナにも愛情を注いでくれており、本当の母親のように接してくれている。その頃から、誠や玲を父と母と呼ぶようになった。
錬たちが東京に出発する前は朱莉を連れ実家に里帰りしていた。
誠「お帰り!無事に帰ってきたか!って…それ、魔物だよな…?」
『これが主の家族か?』
玲「うそ!喋ってる!」
ルナ「実は…」
事の顛末を話すと玲は「また秘密にしなきゃいけないこと増えた…」と呟いていたが誠はあまり気にしていない様子で「んじゃ、家で引き取るしかないな」とあっさりしていた。
誠「それで、こいつの名前は?」
『名前?』
錬「ベヒモスキングだから…」
そこで話していると奥の部屋から目をこすりながら出てくる朱莉がいた。
朱莉「にぃに…きた?」
錬「ただいま、朱莉!」
朱莉「にぃに!るー!」
ルナ「ただいま、朱莉ちゃん!」
朱莉は錬とルナを見つけるとダッシュで駆けてくる。
そんな朱莉を抱っこする錬。
ルナも朱莉をなでる。
朱莉はベヒモスに気が付くと指をさす。
錬「あー、今名前どうしようか考えてたんだよ。べヒモスキングだからね…」
朱莉「きんぐ!」
ルナ「朱莉ちゃん、それは名前じゃ…」
朱莉「きんぐ!」
玲「ふふっ、それじゃキングにしましょうか。それでいい?」
『なるほど、キングか…悪くはない…』
朱莉「きんぐ!」
ベヒモスの名前はキングに決定し、錬から降りた朱莉はキングの近くに行き頭をペチペチ叩く。朱莉もキングに恐れず、キング自身も嫌がるそぶりを見せずおとなしくしていた。
キング『無垢なものよ…』
ダンジョンの主をしていた魔物は今日から錬の家族の一員となった。それからは主にキングは朱莉の遊び相手になっていた。
これが幸いしてなのか、後に朱莉はとある力に目覚め活躍していくがそれはまだ先の話である。
それから1週間後に瑠衣より呼び出しがかかり、錬は約定通り証を授かった。
だが、このことは錬本人の意思により秘匿され知るものは関係者のみとなった。
瑠衣の計らいで、都内近くの高級リゾート地に泊まれることとなり、錬は一緒に行った仲間たちと家族を誘い夏休み最後の週を満喫した。
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