第5話 2年前…since1997 ①

1997年 7月 錬、当時8歳

錬は同い年の弟と当時5歳をすぎたばかりの妹、彩芽あやめを連れ、近所の幼馴染の紗菜の自宅へ訪れていた。

しばらく紗菜の自宅で遊んでいた4人だったが、飽きたこともあって近所のダンジョン近くに来ていた。

大人たちからはダンジョン内には入るなと言われていたこともあり、魔物も生息していることもあって中には入りはしなかった。

錬は転生前の記憶もあったこともありそれなにり自制しており、自分の兄弟達にも気を配っていた。



錬「ごめん紗菜。オレちょっとおしっこしてくる!」

紗菜「う、うんわかった」


ちょっと照れながら答える紗菜。


森の奥に走っていく。そんな錬は用を足すという嘘をいってある場所にむかっていた。

ダンジョン近くにある森の奥には祠があり、そこには神様が存在しているなど地元の住民が話しているのを錬は覚えていた。

自分の両親など先生からこの世界には精霊や神様が存在しており、時折制約を交わし使役することもあるということも耳にしている。そんなこともあり、時折ここにきては大人たちに内緒で祠の前に自分のお菓子などのおすそ分けをしていた。



錬「今日も来たよ」



祠にお菓子を備え、手を合わせる。これでいいかはわからないが毎回行っていた。

そんなことをした直後だった。


「キャー!?」


悲鳴が聞こえる。紗菜の声だと気が付くと錬は急いでその場を走って後にした。

錬が紗菜達の元へ駆け付けるとそこにはダンジョンから出てくる大きな影、教科書に載っていた危険と呼ばれている魔物が目の前にいたのだった。



錬「ベヒモス…」


ベヒモスを目の前に震える紗菜と唯、渉も足がすくんでその場から動けないようであった。




時は少し前にさかのぼる。錬が森の中へ行って数分。渉がダンジョンの中に行こうと紗菜に提案する。いつもであれば止める錬が今いないことをいいことに3人は中に入っていった。

中には魔物がいると言われていたが特に出会う事もなく、少し開けた場所へたどり着くことができた。

だが、そこにいたのは傷ついたベヒモス。教科書などにも載っている危険視が上位に入る魔物…。

3人は悲鳴をあげ、逃げ出すがそれを追ってベヒモスもゆっくりと3人を追い始めていた。

ダンジョンの入り口前まで逃げた3人だったが、全力で走ってきたためそこで疲れてしまい座り込んでしまった。

だが、そんな3人を追って入口近くまできていたベヒモス。それに気が付いた紗菜は再び悲鳴を上げる。そこで錬が駆けつけたのだった。



錬「3人とも…動けるか?」


こくりと頷く紗菜と渉。渉は彩芽を立たせるとしっかりその手をにぎった。

ベヒモスはじりじりと近づいてくるもののまだ襲ってくる様子はない…。おそらくこちらの様子を伺っていることは錬にも感じ取れた。

一気に動いてしまえばおそらく飛び掛かってくることも予想できた。


錬「いいか2人とも…俺があいつを引き付けるから。ゆっくりとこの場を離れろ。いいな?」

渉「でも、それじゃ兄さんが…」

錬「このままじゃ、全員ここであいつにやられる…だったら、生き残れる方にかける!幸い俺はまだ体力は有り余ってる。怪我してる状態のあいつなら逃げ切れる…と思う」


何か言いたげな紗菜と渉に俺が引き離したらいけと伝えると錬は3人からゆっくり離れる。


錬「やい!デカブツ!こっち向け!」


錬は自分の魔力を練ると、火の玉を作り出しベヒモスめがけ投げつける。

火球はベヒモスに命中するがダメージには繋がっていないように思えたが、ベヒモスは3人から目を離しこちらを見つめる。

ターゲットがこちらに向いたと確信した錬は後ろを振り返り森に向かって駆け出した。それにつられるかのようにベヒモスも重たい足を引きずるように錬の後を追っていく。

ベヒモスの巨体は森の木々をベキベキとなぎ倒していく。

そんな様子を見て我に返った紗菜は渉に彩芽を連れて一先ず大人たちを呼んでくるように促す。

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