第9話 うちにおいで



 屋敷が落石で半壊したのは貴方達黒幕のせいなんですけどもね。


 そんな文句を裏にひそめながら、事情を説明したら。その保険医はにっこり。


 ただのにっこり顔なのに、なぜか鳥肌が立った。


「それは困ったね? じゃあ、私の家においで?」

「え?」


 なんて事を、言われてしまった。


 そんな余裕あるんだ。


 と思って、次に、いやいやそんなことかんがえている場合じゃない、と思い直した。


 どういうつもりなのか分からないから、相手の顔をじっと見つめてみるけど、やっぱりどういうつもりなのか分からないままだった。


 保険医って、ゲームでは誰にも懐を明かさない人間だった。


 そのはず。


 誰かに、ヒロインにすらプライベートな面を見せるシーンはなかったはずだけど……。


「あの、いえ。私は大丈夫ですから」

「いやいや、遠慮しないで」

「その、本当に」


 え、いや。本当に遠慮したいですんですけど。


 黒幕さん達のお世話になんかなりたくないし。


 なのに、保険医はぜんぜん引いてくれない。


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