145話 シャンソン教室に入学
第147章
藤枝か歌い終わると生徒たちが一斉に拍手した。講師が藤枝のそばにやってきた。
「実に上手でした。これだけ上手ならわざわざこの教室に入らなくても大丈夫ですね。フランスの歌を歌いたい。しかし歌えない。だからそういう方のためにこの教室があるわけですから。あなたのような方がこの教室に入っても意味がありませんね」
講師がこういうと、藤枝は急に元気になり言った。
「入学させてください。歌を歌ったら急に疲れがなくなりました。今日は一日中、腹筋をしたり、跳び上がったり、全力で走りまわったり、ロープを昇ったりして疲れ果てていました。それでそこの歩道を重苦しく歩いていました。しかし今はもう違います。体が軽くなりました。飛びながら家に帰ることだってできます。これもここで歌を歌ったおかげです。ジャンヌの歌をです。と言うよりかヴェロニクジャノでしたね。歌っていてとても楽しかったです。お願いします。この教室に入学させてください」
「それはももちろん歓迎です。ありがとうございます。これからも楽しい曲がたくさんありますから。一緒に歌っていきましょう」
藤枝は入学手続きをすますと、教室のある建物を出ていった。これからの歩道の歩きは実に軽やかになった。まるで空を飛んででもいるかのような足取りになった。体が自然に浮かび上がってしまうほどの軽やかさになってしまった。さらに頭の中ではさっきの曲のメロディーが鳴り続けていた。ジャンヌが歌っている光景が常に頭の中に映し出されていくのであった。
このヴェロニクジャノの(aviateur)『航空士』という歌のレコードのジャケットは、ヴェロニクジャノがジェット戦闘機のコックピットを背景にして写っている写真が用いられているようである。まさにフランス版トップガンである。そこでもしジャンヌが同じようにジェット戦闘機のコックピットを背景にして写真を撮影したら、と思いながら歩道を藤枝は歩いていた。 つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます