89話 自己紹介文完成
第91章
過去は、最近の過去、かなり昔の過去、過去の習慣、こういう具合に話すのだったな。『ここの試験場ブレストに来ることができてよかったです。パリからブレスト駅までTGVに乗ることができました。TGVに乗ったのは初めてでした。とても速い電車でした。窓から見える景色がとてもよかったでした。フランスの街をたくさん見ることができました』 今に近い過去はこれくらいでいいだろう。では次はかなり昔の過去について。『私の小学校、中学校は日本でした。小学校では英語の授業はありませんでした。ローマ字を習っただけでした。中学校で英語の授業がありました。英語の学習をすると外国のことに興味を持つようになりました。この地球上には、いろいろな国があるのだなと思いました』 これぐらいしか思い浮かばない。
では過去の習慣について。『漫画をよく描いていました。よく読んでいた漫画雑誌の中で好きな作品の漫画をよくまねして写していました。このころは漫画家になりたいと思っていました。しかし描いて描いても絵がうまくならず、漫画家になるのはあきらめてしまいました』 これぐらいしか言えない。
仕方ない、では次。未来について。これはもちろんこの試験に合格して、空母パイロットになること。しかしこれは実現可能な未来というより実現できるかわからない願望でしょ。未来と願望を分けて考えることなかなかできない。願望だったらいくらでも考えることができる。しかし事実より願望の話のほうが多くなりすぎると自己紹介として妥当なのだろうか。自己紹介というのは、その人の事実を紹介することが重要で、現実にはない事柄を述べてもその人の実際の人となりを知らせていることにはならないと思う。どうしよう、これでは5分間も自己紹介ができない。
あ、そうだった。日本語で自己紹介文を書けても今度はこれを英語に訳さなくてはならなかった。どうしようか、もう時間はないし……。試験は明日だから。仕方ない、もうこうなったら運に任せるしかない。もっとも第1日目の試験に合格できたらの話だから。まだ合格できたかどうかもわからないうちにこんな心配していてもしかたない。あー、もうこんな時間早く寝ないと。 つづく
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