78話 あたしたちのETOURDIEに 

第80章

 二人は宿舎に着いた。部屋の中に入るとさっそく明日の試験の話になった。

「フランスの海軍士官学校だけれど、もしこの試験に合格してここにまた来れるようになったら十分見ることができるから」

「それは合格できたらということですね」

「もうあきらめているの?」

「やはり難しいかもしれません」

「もちろん明日の朝になればわかることだけれどね」

「不合格になったらすぐこの基地から出ていかなくてはならないのですね」

「不合格になる受験生、たくさんいるみたい」

「しかし運がよく仮に合格できても、今度はまた英語の試験。今度は試験官と一対一での口述試験でしたね」

「そう」

「確かジャンヌは、TOEICで785点以上取ったからこの英語の口述試験、免除でしたね」

「一応はね。しかし今度はトゥーロンでも英語の試験があるみたいだから」

「ああ、航空身体検査をするところですね」

「そう。そこでは一週間かけて試験だって」

「あたしはそんな先のことまで今心配できません。それより明日の英語の試験が心配です」

「ならよかったじゃないの」

「どうしてですか」

「明日の英語の試験を心配できるということは、今日の試験、合格できる自信があるからでしょ」

「……」

「もし今日の試験合格できなかったら、明日からの試験全部受験できなくなるわけだから」

「まあ……」

「では今日の試験、合格できるということを前提でこれから話しましょう」

「希望が持ててきました。航空身体検査といえば明日、英語の試験が終わったら健康診断(visite medicale)があるみたいですね。トゥーロンでの航空身体検査とは違うのですね」

「そうね、明日の健康診断は、3日目にある体力試験ができるかどうかを試すためのものみたいだから(c'est juste pour confirmer votre habilitation a subir les epreuves sportives le lendemain)

 その時先輩上級生が二人の部屋にやってきた。

「食事です、部屋を出てください」

 二人は部屋を出て、またRESTAURANT BEARN RAMPE SUDと書かれた食堂に向かった。  

「ではあたしたちのETOURDIEに」

「あまりそそっかしくしないようにですね」

「軽率な行為もしないようにしないとね」

「今夜はどういうメニューでしょうかね」

「何かテーマに沿った食事であるとおもしろいけれどね」

   つづく


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る