47話 航空知識試験がこれから始まる

第49章

「ユキコ、ユキコ、起きなさいよ」

藤枝有紀子の後ろに座っているジャンヌが机の上で寝ている藤枝の背中をつついた。

「もうすぐ始まるよ」

「あーそうだった、次は航空知識試験でしたね」

藤枝は眠そうに言った。

「どうだった、よく眠れた?」

「はい、どうにか。これで少しは自信が出てきたみたいです」

「僕はヘリコプターの問題なら自身があるよ。ヘリコプターの問題がたくさん出てくれるといいのだがなあ」

藤枝とジャンヌのそばにいたアランドロンがこのように余裕気に言った。

 試験官が問題用紙を持って教室の中に入ってきた。ドロンはすぐ自分の席に戻った。今までざわめいていた教室の中が静かになった。

「これから航空知識試験を始めます」

 試験官がこう言うと、さっそく問題用紙が一人一人に配られていった。藤枝は自分の机の上に配られた問題用紙をじっと見つめていた。試験開始までまだ数分あった。その間彼女は、羽田空港で元EOPAN・FRのエールフランスの機長から教えてもらった問題の出題傾向を頭の中で整理していた。早く目の前に置かれた問題用紙を開きたいと思った。せっかく教えてもらったことが忘れてしまいそうになるからであった。

 試験開始までのあと数分が実に長く思えてしまった。腕時計を見てもさっきから針が全然動かないような気がしてきた。この時計もしかしたら壊れてしまったのだろうか。短い針はもちろん絶対に動かない。長い針も動いていないみたいである。こういう時は秒針を見ればいいのである。しかしその秒針を見てもじっとしているみたいに見えてしまった。あ、動いた。秒針がやっと一つの目盛りだけ動いたようだ。この腕時計は壊れてはなさそうだ。それにしてもなんでこんなに時間がたつのが遅いのだろうか。早く始まってほしい。せっかく教えてもらったことを忘れてしまう。お願いです、早く時間になってください。

「では始めてください」

 試験官のこの言葉を聞くや、彼女はホッとした。そして問題用紙を開いた。   つづく

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