46話 機長による航空知識試験対策終了

第48章

 藤枝は真剣に機長の言葉を手帳に書いて行った。

「そのほかにはミサイルの問題なんかも出るから」

「どういうものですか」

「AASMミサイルとは何か、とかいう問題」

「どういうミサイルですか」

「空対地モジュラーミサイル(armement air-sol modulaire)だよ」

「そのほかのミサイルもありますか」

「AM39エグゾセミサイル(le missile AM39Exocet)とは何か、とか」

「何ですか」

「航空機から発射される(lances par aeronefs)対艦ミサイル(missile antinavire)だよ」

「それから」

「それ以外にはおもしろい問題というか、12Fジェット戦闘機隊のワッペンのデザイン(l'ecusson de la 12F)は何かという問題なんかも出るよ」

「何ですか」

「アヒルだよ (canard)」

「ほかには」

「大体こんなところだよ」

 この時のことだった。

「藤枝さん、そうじ終わりましたか」

コックピットの外から彼女はこう言われると少し驚き返事した。

「はい、もうすぐです」

「私の話役に立ちましたかね」と、機長。

「それはもう、とても」

「では私はこれで出ていくから」

機長は大きな直方体の形をしたパイロット用のカバンを持ってコックピットを出て行った。

「ありがとうございました」

 彼女は機長の後姿を見送った。藤枝は誰もいなくなったコックピットの中の掃除を始めた。床に落ちているごみをすべてかたずけた。そして、副操縦士席と機長席についているパイロット用の酸素マスクのアルコール消毒をした。

 飛行機の掃除がすべて終わると、大きなごみ袋を抱えて飛行機を降りた。それで彼女は帰ることにした。また細長い通路を歩いて帰って行った。女性グランドアテンダントのロッカー室があるところにまた来ると、そこの通路を挟んでロッカー室の向こう側に畳の休憩室があった。彼女はその部屋に入り少し休んでいくことにした。畳の上で寝ころんだがそのままいつのまにか寝てしまった。   つづく


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