44話 藤枝操縦室で機長から航空試験対策

第46章

 藤枝は機長の話に夢中になって聞いていたため今まで集めたごみを副操縦士の座席にこぼしてしまった。

「あ、すいません」

「ハハハ、私の話がそんなにおもしろいかね」

「ええそれはもう」

「そんなに興味をもってくれると私もありがたい。もっと話したくなるよ」

「お願いします。できるだけたくさん。もう時間がないので……」

「そうか、そうじの時間がないのだね」

「え?」

「ではこれから早く話すよ。君が今ごみをこぼしたパイロット用の座席だけどね、こういうパイロット用の座席の問題なんかも出るんだよ」

「どんな問題ですか」

「たとえばラファール戦闘機(Rafale)の射出座席(siege ejectable)を製造した会社はどこですかというような問題」

「射出座席とは何ですか」

「パイロットが座席に座ったまま操縦室から脱出できる座席のことだよ。座席がロケットのように操縦席から飛び出す座席だよ」

「あ、よく映画なんかで見たことがあります。飛行機が墜落していくときに風防ガラスが外れてそこから座席ごとパイロットが飛び出してきてパラシュートが開いて助かるというシーンです」

「まさにその通りだよ」

「それでその製造した会社はどこなんですか」

「マーティンベイカー社(Martin-Backer)だよ。(L’entreprise mit au point un siege ejectable qui fut teste pour la premiere fois,le 24 juillet 1946)」

「そのほかにはどういう問題が出るのですか」

「ジェット戦闘機の海軍航空隊(flottilles de Chasse)はいくつあるのかとか」

「いくつですか」

「三つだよ。11F、12F、17Fだよ」

「そのほかの問題は?」

「EIPの正式名称をのべなさいとか」

「あ、これは知ってます。第50S飛行中隊所属初期パイロット養成校(Ecole d’Initiation au Pilotage escadrille 50S)ですね」

「良く知っているね」

「そのほかは?」

「それにしても、ずいぶん熱心だね、まるで君もEOPAN・FRの受験生みたいだね」

「もう時間がないのです、今日しか」

「そうだったね、今日中にここのそうじをしなくてはならなかったんだったね」   つづく

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