34話 ジャンヌとアランドロンと同室受験

第36章

 藤枝達受験生が全員教室の中に入ると、先輩上級生が言った。

「自分の受験番号の書いてある机に座ってください」

机の上には受験番号のシールが貼られていた。藤枝達受験生は自分の受験番号のシールを探しながら教室の中を歩き回った。藤枝は自分の机を見つけると、椅子を引いて腰かけた。ジャンヌも自分の席を見つけたようだった。藤枝の後ろの席であった。二人はカバンを開けて筆記用具を出して試験の準備をしていた。するとアランドロンが二人のそばにやってきた。

「ユキコ、今日の試験対策してきたか」

アランドロンが藤枝に聞いてきた。

「一応はしてきました。ドロンさんはどうですか」

「僕ももちろんできるだけのことはしてきたよ。どうしてもヘリコプターのパイロットになりたいからね」

「では、ドロンさんは合格できますね」

 二人のやり取りを見ていたジャンヌが藤枝に聞いてきた。

「ユキコ、この男と知り合いなの?」

「ブレストの駅まで来たTGVの電車の中でずっと一緒でした」

するとドロンがすかさず言った。

「席も隣同士だったね」

「指定席でした。しかし私の隣の席は、ドロンさんの席ではありませんでした」

「そうだったっけ」

「そうでした」

「それに僕たちが知り合ったのはTGVの中よりもっと前だったよ」

「確かにそうでした。パリの軍情報採用センターの面接の時からでしたね」

 その時教室のドアが開いて、試験の問題用紙を持った試験官が教室の中に入ってきた。ドロンはすぐに自分の席に戻った。

「これから人格試験を行います」

藤枝達教室の中にいる受験生たちは、参考書などをすべてカバンにしまった。試験官が指示すると先輩上級生は試験用紙を一人一人の机の上に置いて行った。すべて配り終わると、一瞬教室の中は静かになった。受験生たちは全員身動きもせず自分の机の上に配られた問題用紙の上をじっと見つめているだけであった。

「では始めてください」

試験官がこう言うと、急に紙のめくれる音で教室内はにぎやかになった。

藤枝も目の前に置かれていた問題用紙の中を開けた。   つづく


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