第20話 最後の生き残り



 目を覚ますと、私は階段の下で倒れていた。


 体のあちこちがいたい。


 でも、そんな事はすぐに気にならなくなった。


「にし、の?」


 視線を上に向けると、西野が血まみれになっている。


「うそ、いや。いやだよ。にしの!」


 もう何もうつさない瞳と視線が合った。


 あんなに私の事を心配してくれたのに。


 もう何も。


 感情が伝わってこない。


「だれが、こんなことを」


 視線をそのまま横に向ける。


 どこに隠れていたんだろう。


「ひっ」


 口から、悲鳴がもれた。


 血まみれの西野の、その隣に髪の長い子供がいた。


 フードをかぶっていて、顔が良く見えない。


「~~~」


 その子供の手は真っ赤だ。


 そいつが西野をやったのだ。


 最後まで私を心配してくれた西野を。


 夢で聞こえてきた声はきっと西野の声だった。


 私を起こして、逃がそうとしてくれていたのに。


 西野は私の事をずっと心配してくれてたのに。


 疑ったりしてごめん。


 夢の通りになんてなるわけがなかったのに。


「う、うわあああああ」


 頭に血が上った私は、そいつに掴みかかろうと階段をのぼった。


 涙で滲む視界でずっとそいつを睨みつける。


 けれど、私の手は届く事がなかった。


 周囲の景色が歪んでいく。


 気が遠くなっていた。


 いやだ。そう思っても、体が言う事をきかない。


 糸がきれるように、力が抜けていった。


――ドウシテ邪魔をスル。お前もオナジなのに。


――タスケテやった。だけなのに。


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