建徳2年(195年)
色々やっているうちに年が明けたな
さて、色々やっているうちに年が明け建徳2年(195年)になってしまった。
正月から古の聖天子堯舜のような聖帝による統治の復古体制に伴う宮廷行事の改革も行なう。
「朕が直々に民へ向かい、ねぎらいの言葉をかけよと申すか」
「はは、聖帝陛下より言葉をかけられれば民もきっと喜ぶことでございましょう」
「わかった、文面はそちらで用意せよ」
「かしこまりてございます」
あくまでも聖帝は徳を持って統治をするというのは名目で、実際になにを行なうかは聖帝陛下に奏上した上で許可をとって俺たち臣下が行なうのであるが、そういったなにを行なうかを禁裏の見晴台にたって民衆へ直接言葉として伝え、手を振るなどを行なうことで民衆よりの熱狂的な人気を持つに至らせたいということもを伝えたら聖帝は快くそれを受けてくれた。
「わかった、そのようにしよう。
それが国を統治するためにも重要であるのだろう」
「はい、そして聖帝陛下は過去になにが起きたかをよくお学びください。
それを以て統治者が行ってはならぬことがわかると思います」
「官位を金で売るとかなどだな」
「まことそのとおりでございます」
たとえば貧しい者のためにどこで炊き出しをするとか、洪水被害を受けた村の民に心を痛めており、救済するために税を免じるとかといった弱者救済に関してを伝えるだけで、どこかが攻撃を仕掛けてきただとかはいちいち伝えないけどな。
そして各地における動向を見ながら進めてきた軍縮も本格的に治安維持がメインの平時任務へ切り替えを始める。
「ようやく俺も軍を退くことができそうですよ兄上」
董旻はそう言って笑った。
「ああ、長い間、俺の代わりに闘い続けてくれたのは本当に助かった。
しばらくゆっくり過ごしてくれ」
「しばらくと言わず今後は息子たちに戦いの指揮は任せてもうゆっくりしたいものです」
「その気持はよく分かるが、何かあった時は動けるようにしておいてくれ」
「なにもないのが一番ですが、何が起こるかは天のみぞしる所ですから致し方ありませんな」
という風に長い間俺と共に戦ってきて50に近づいたものは現役を退いて、それぞれの息子などに兵権などを譲ったりしている。
兵士のうち帰農するものは農民へ戻り、それでも多い分は将軍なども含めて予備役とその監督員として通常は田畑を耕すようにさせた。
いわば予備役としての動員は可能にしつつも農業を優先させる形だ。
戦役で流民となって戸籍から外れたものも戸籍と田畑を与えて屯田をさせ、定住を進め、中原の戦乱により農民が逃散した耕作放棄地の再度の農地化を進めている。
主要な街道や運河が整備され、そういった幹線道路への警備兵も配備し巡回させてきたことで商取引も活発になってきた。
「商取引が活発になるのは良いことだが銭のままではちと不便か」
それに伴い銅銭だけではなく金銀を用いた高額貨幣の造幣にも踏み切った。
「銭を多量に持ち歩いていてはおもすぎて運ぶのに不便だしな」
そして昨年周辺国に朝貢を行なうようにと送った使者が各国の王や代理の者を伴って戻ってきた。
羌族や南匈奴など若いときから付き合いがある異民族や巴蜀の板楯蛮、交州の劉焉などがまずは早く使者を送ってきた。
「ふむ、まあ大方予想通りだな」
それから西の大月氏国や東の高句麗、新羅、百済、扶余といった朝鮮から満州周辺の国や江夏蛮、武陵蛮といった荊州の異民族なども来た。
そして烏桓や鮮卑、山越なども一部の長はやってきた。
異民族に関して全ての長がやってきたわけではないようだが、やってきたものに朝貢品に対しての返礼品として絹や武器と軍事的な権限をある程度与えて監視をさせればよかろう。
伽耶を含んだ倭国の長の卑弥呼もやってきたようだ。
「どうやら袁家のものが倭国大乱にて邪馬台国と敵対するものに加担しておるようです」
俺は董超からそのように報告を受けたがそういう可能性はあるとは思ったよ。
「で、あちらの望むものはなんだと?」
「武器と多少の兵をと」
「そういえばあちらから送られてきたものは何だ?」
「奴婢生口の男女10人と班布2匹2丈です。」
班布は麻の織物で長さは約20mほど。
まあ邪馬台国の国力はこの程度ということだな。
「ふむ、まあよかろう。
部の長と兵2000名ほどをつけ、武器を送ってやるがよかろう」
「わかりました」
魏の曹叡は卑弥呼を親魏倭王に封じ、金八両、五尺刀を二口、銅鏡を百枚、真珠五十斤、鉛丹五十斤などの下賜品を与えたが、おそらく銅鏡をそんなにたくさん贈られても卑弥呼も困っただろう。
なお真珠や鉛丹は中国では錬丹術にて不老不死の研究に使用されていた材料であったので、おそらく曹叡は蓬莱の島の住人であると考えられていた卑弥呼に、自分の病を治す錬丹を作ってほしかったのではないかと思うが、おそらくそんな事ができたとも思えないし、卑弥呼が欲しかったの本来ならば武器だったと思う。
「まあこちらの不始末でもあるし、自分のケツは自分で拭かねばならんよな」
しかし袁家の兄弟たちはボンボンのくせに意外としぶといな。
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