呂布の敖倉攻撃

 袁紹討伐の一軍を任された呂布は出立すると、全軍へと指示を出した。


「まずは河南尹の敖倉を確保する!」


「了解しました!」


 呂布の指揮下の兵は隊列を崩さぬように街道を整然と進んでいく。


 敖倉は秦の時代よりの食料集積地であり、楚漢戦争の際に度々重要な拠点として楚軍と漢軍の奪い合いがあったが、その重要性は現在においても変わっていない。


 敖倉を確保しその食料を手に入れることは非常に大事なことであるのだが、翻ってみれば反袁術連合軍はだれもそこの確保に動ここうとせず食糧難に陥っている。


「所詮奴等は烏合の衆であったということであろう」


 もっとも西楚の覇王項羽も食料がいかに兵士を動かすのに重要であるかは理解できておらず、逆に漢の高祖は敖倉の食料の重要性をよく理解していたため敖倉の確保に全力を注ぎそれを奪取すると、周勃に命じて奪われないように厳重に守備を固めたが項羽は敖倉の奪還にはそこまで拘らなかった。


 周勃は敖倉を死守して最終的にはその兵糧を守りきり、彭越の後背における活躍もあり楚軍は飢えた。


 結果として項羽は破れ、漢の国がこの大陸を制覇したのであったそうだ。


「しかしながら我が義父上の見識には驚くのみだ」


 羌族や匈奴、鮮卑や烏桓などが戦場のみならず度々略奪を行うのはともかく、太守や将軍でも略奪を行うものは少なくない。


「しかしながら義父上はちがう」


 兵を維持するには食料や清潔な水、武器や鎧、そして病の発生を防ぐことが大事であると呂布は教わったがそれは間違いないことであった。


「兵を維持するために大事な場所を見極める目を持つことは大事であると袁紹の下の者にはわかるであろうか?」


 呂布は敖倉へと兵を進めた。


「偵察部隊を出せ!」


「はっ」


 やがて偵察を行い戻ってきた偵察部隊の報告によれば袁紹はここの守りには兵数をさほど割いてはおらずその数は5000ほどであるようだ。


 とはいえ町も宮殿も農地の一部さえ城壁や濠に囲まれていて、城壁の上には矢を放ったり、溶かした鉛や煮えたぎった油や大便小便などを攻め寄せるものにかけやすいようにつくられている。


 そして城門の前には関城があり、呂布たちを迎え討ってきた。


「大した数ではないな、揉みつぶせ!」


「了解であります!」


 関城からでてきた袁紹の守備兵をあっさり揉み潰し兵を進める。


「袁紹はここを死守するつもりはなさそうだな。

 攻城兵器を進めよ」


「はっ!」


 梯子や雲梯うんていを使って城門や城壁の上に登ったり、 衝車しょうしゃ轒轀車ふんおんしゃや投石機や攻城弩を用いて城門や城壁を壊して城の内部に入り込めば、数でまさる側が勝つのは自明の理だ。


 その他に臨と呼ばれるような城の城壁と同じ高さの土山を築き、それを延長させる事で城壁の内側に入り込もうという方法や城の周囲の濠を埋めるたり逆に周りを水浸しにする水攻めを行ったり、穴と呼ばれる地下道を掘って城壁を落下させて破壊した、突と言われる地下道を掘り、城内に侵入して奇襲攻撃を行う方法などもある。


 最終的には蟻傅ぎふと呼ばれる兵士の損害を度外視し、兵士を蟻のように城壁をよじ登らせると言う方法もあるわけだが。


「無駄に兵を損なうことは義父上も望まれぬであろう。


 なにも焦ることはないのだから、確実に敵を追い詰め城を落とすとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る