荊州の反乱を鎮圧している間に袁紹と袁術が正面衝突か

 さて、俺は袁術、正確には朝廷から荊州南部の反乱鎮圧を言い渡された。


 征南将軍と征西将軍の兼任なんてのはおそらく前代未聞なんだが、袁術は後に大将軍を2人同時に任命したりもしていて、黄巾の乱まではともかく、それ以降は将軍に任命される人間の数が増えすぎて、大将軍と言っても大した権限を持ってない状態になったりする。


 そして史実本来であればまだ霊帝は生きているし、涼州大乱は続いていて韓遂が仲間の北宮伯玉、李文侯、辺章を殺害し、王国・韓遂・馬騰が三輔に侵攻したり、益州の黄巾の反乱や黒山賊もまだ鎮圧されておらず、張純が張挙や烏桓の族長である丘力居と共に幽州で反乱を起こしたり、長沙で区星が零陵・桂陽で周朝・郭石が反乱を起こし、それに対しては孫堅が長沙太守に任命され、1年ほどで3つの郡に渡った反乱を鎮圧し、南匈奴の休屠各胡も反乱を起こしたりして、あちこちで反乱が起きて殆どの場所ではそれを鎮圧することもままならなくなっていたのだが、実際には霊帝は既に死んでるし、涼州現状では反乱に関してはまだましな代わりに、袁術と袁紹による実質的な内戦状態に突入してしまったというところだな。


「しかし、黄巾はともかくその他の反乱は辺境ばかり。

 相変わらず目が届かぬことを良いことに私腹を肥やすような連中ばかりか」


 荊州南部の出身の者たちは苦い顔をしている。


「我々にとっては受け入れがたいですが、おそらくそうなのでしょう」


「涼州や并州・益州もそうであったからな」


 賈詡も苦い顔で言う。


「たしかに荊州もそうでしたな」


 俺は賈詡の言葉にうなずきつつ言う。


「交州に赴任した劉焉も中央の政争から逃げ出しただけに見えるが、注意はしておかねばな」


 許攸がそれに対していう。


「交州は人は多いとは言えませぬが、特産品により富は集まる場所ですからな」


 許攸は陳蕃の子である陳逸や冀州刺史王芬、沛国の周姓とともに、霊帝を廃して劉氏の一族である合肥候を新たな天子に迎えようとした。


 霊帝は河間国の旧宅を巡る予定があったので、黒山賊を討つという名目で兵を集め、洛陽を離れた、そこで霊帝や宦官を誅殺してしまおうとしたのだな。


 しかし、霊帝の河間国への巡察は中止となり、霊帝が王芬に兵を解散して洛陽に来るように命じたことで、王芬は霊帝殺害の陰謀が発覚したと思い、自害してしまった。


 王芬は曹操や華歆、陶丘洪などにも、霊帝廃位計画を持ちかけていたが、協力を断られているのでそこから漏れたと思ったのかもしれない。


 その時許攸は慌てて身を隠したが、翌年に霊帝が崩御して宦官が殺害されると。結局有耶無耶になってしまう。


「うむ、そうだな」


 許攸なども既に霊帝と宦官を見限っていたわけだが現状ではどう考えてるかはいまいちわからない。


「念のために、劉(焉)君郎からの攻撃に警戒は必要かもしれぬな」


「劉(焉)君郎はもとは荊州は江夏郡の生まれ、今回の反乱に関わりがあると?」


「おそらくそれはないが、彼は霊帝にはおそらく失望していたとも思うのでな。

 俺たちが苦しんでいる民衆の怒りや不満からくる訴えを聞かず、立ち上がった民を武力で理不尽に押さえつけてるなどという詳細不明の噂を聞いた勘違いからくる思い込みで、俺達を嫌っている可能性 もある」


「なるほど、そうかも知れませぬな」


 そして俺たちは地元の名士である、蔡瑁など協力と公的な役所の船などを借りながら、区星・周朝・郭石等の反乱を鎮圧した。


「それにしても優秀な部下がいるとえらい楽だな」


 なにせ朱儁・朱治・陶謙・孫堅・蔡瑁・黄忠・黄蓋・黄祖・陸康・陸儁といった者たちがいるのだから反乱軍などひとたまりもない。


 幸い劉焉から攻撃を受けることもなかった。


 このころ北方の袁術と袁紹を中心とする反袁術連合軍との戦で、反袁術連合軍の主なものがいる兗州の陳留は彼らの掠奪などで住民が逃散し、荊州や揚州などに逃げ出してきていた。


「名目上は反乱軍だから、役所の食料を使えんからな」


 史実でも反董卓連合軍はろくに戦わなかったといわれるが、実際には袁術の調達する食料だけでは到底間に合わずに、現地での兵士の食べる食糧の調達が出来ずに集まった諸侯がこぞって、略奪を始めたことで、住民は逃げ出して半減しているらしい。


 史実において曹操が後に屯田兵を扱うようになったのも、この反董卓連合軍が集まったのは良いが食料が足りずに掠奪しまくったことを目の当たりにして、これはなんとかせなばならんと考えたかららしいな。


「北方から避難して来たものは、受け入れよ。

 働けるものは田畑を耕させ、戸籍に登録せよ」


「かしこまりました」


 とりあえず荊州や揚州の人材の引き上げもやらんとな。


 揚州なら凌操や蒋欽・虞翻などがいるはずだ。


 周瑜とかはまだ若すぎるだろうけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る