ではどうやって攻撃するかだが
だいたいのものの名乗りも終わったところで実際の攻撃方法について話し合うことにしよう。
「さて、南陽にて黄巾の将である張曼成は、南陽は宛県城を制圧して拠点としている。
これに対して我々はどうすべきであろうか?」
これに対してはまず軍師の賈詡が発言した。
「黄巾の匪賊の数は多く、正面から力押しで当たるのは得策とは言えません。
まずは洛陽よりの討伐軍は士気が低く、逃散兵がでていると噂を流し、まずは少数で門を攻撃すると見せかけ、相手が出てきたら逃げて、伏兵をおいた場所へと誘導し、そこで撃滅したほうがよろしいかと。
城内の武器を抑えられているとすれば少々厄介かもしれませんが、弩は追撃には使えませぬからな」
俺はその言葉に大きくうなずく。
「ふむ、やはり相手をおびき出したほうが良かろうな。
数では下手すれば倍ほど差があるゆえに」
それに荀彧が意見を付け加える。
「敵はなるべく遠くまでおびき出し、一列に長くなるようにすべきでしょう。
そして伏兵も分けて敵が城から出尽くしたら、同時に攻撃をかけるのが良いかと」
「なるほど、それもそうだな」
黄巾の信徒の兵数は36万と言われているが、実際にはそこまでいないはずだ。
組織の首脳部は張角とその弟である、張梁、張宝の3人で張角が天公将軍、張宝が地公将軍、張梁が人公将軍と名乗りそのしたに36人の
もちろんこの中には老人や女性、子供も混じってるわけで全員が戦闘要員ではない。
ただし、黄巾の乱にはどさくさ紛れの山賊ややけになった百姓なども加わっているので、実際の総数は不明としかいいようがない。
だが冀州豫州荊州をあわせて16万から20万人程度の兵にはなっているだろう。
こちら官軍側はそれぞれ3方面に4万人ずつの兵とはいえ、豪族の私兵や義勇兵の寄せ集めでもあり、あまり連携が取れない状態でもあろう。
もっともそもそも正史では官渡の戦いの曹操軍が1万弱と袁紹軍が10万とされているが実際は曹操軍は5万ほどはいたはずだとされ、演義では曹操軍が10万と袁紹軍が100万などとされてるが冀州の人口がおよそ600万人弱なのに兵士が100万人というのはまずありえない。
単純に人口の半分は女でその半分は未成年、成人男性がおよそ150万人のところを100万人も兵士にしたら畑とかがどうなるかは考えなくてもわかるだろう。
なので実際の敵の兵数はわからんというのが実際ではあるんだが、今回の黄巾の乱が今までの反乱と大きく違うのは、いままでの反乱は起きた場所も辺境でほとんど異民族が関わっていたが、この黄巾の乱は洛陽の目と鼻の先の豫州の潁川や荊州の南陽で大きな反乱が起こっていて、郡太守や州刺史となども結構殺されてるということだ。
いや、いままでも交州の反乱では太守が結構殺されたりしてるんだがな。
「では、まず敵をおびき出す先陣は誰が務めるかを決めよう。
疑似敗走をして兵が逃散しない自信のあるやつがいい。
俺が行ってもいいがな」
まっさきに手を上げたのは呂布だった。
「ならば先陣は俺に行かせてくれ!。
うまくやる自信はある!」
そして二人の息子も手を上げた。
「では我々が補佐しましょう」
「息子だからって贔屓されてるとは思われたくありませんしな」
「ふむ、いいだろう、お前たち先陣を見事努めてみせよ」
呂布ももう30歳目前で一軍の将として十分働けるはずだ。
配下の兵も并州以来の馴染みの仲間というべきものが多いしな。
「ふむ、董将軍がそういうのでしたらまずは彼らに任せてみましょうか」
馬騰がそういうと周りも積極性には差はあるとは言え、馬騰の意見に賛成した。
この黄巾の乱を立身出世の機会と捉えているものは、自分が行きたいと思っているものも多いだろうが、俺や俺の縁戚である涼州の武曲が呂布や俺の息子たちをまず行かせるといっているなら表立って反対もできないだろうし、義勇兵を集めて来ているだけの連中では疑似敗走というのは難しいからな。
疑似敗走でもそれを行っている時に本当に兵士が逃げ出す可能性も高い。
「では、黄(忠)漢升殿。
このあたりの地形を地元のあなたに教えていただきたい。
伏兵はどこに置くべきであるかな」
「はい、この地についてはお任せください」
その後、黄忠の説明で地面に簡単な地形を木の枝で書き記し、伏兵を置く場所と担当を決めていった。
「では、配置も決まった。
奉先うまくやれよ」
「わかっております、見事賊徒共を釣りだしてみせましょう」
こうして南陽へ俺たちは大車(輜重車)などを従えて向かい4月には黄巾賊討伐が始まるのであった。
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