荀彧と血縁を結ぶか曹操と血縁を結ぶか

 さて、俺は俺の息子や呂布を含めた子どもたちなどを馬術・弓術・格闘術・蹴鞠などを行わせてきたえつつ、曹操・荀彧や荀攸などには賈詡などと共に象棋の相手をして思考力を鍛える方面で成長を促すことにした。


 この間にもまた奥さんに子供ができて二人は男の子、一人は女の子だ。


 そして母子ともに元気に過ごしていてなによりだ。


「ふむ、荀文若か曹孟徳のどちらかに娘を嫁がせて血縁を築いておきたいところだな」


 この時代血縁関係による絆は結構硬い。


 無論そういった物があっても敵対したりする場合もあるが、史実における牛輔の配下に結構有力な人物がいたりもするのであなどれないのだ。


 まあ、そういった血縁から九族までも連座されて罪もないのに死ぬ場合もあるのは怖くもあるけどな。


 曹操は曹仁や夏侯惇・夏侯淵などの一族や部下に武勇に優れたものも多いし、豫州沛国譙県での影響力もでかい。


 一方の荀彧は何顒から「王佐の才である」と称揚され彼の祖父の荀淑が荀子の血筋とされ、儒学に精通し当時の朝廷を牛耳っていた梁冀一族を批判し、清廉な道を貫いたため、極めて名が高く「神君」と呼ばれ尊敬を集めていて、梁冀と反目した李固や李膺は、荀淑を師として崇めていたくらいで豫州潁川郡潁陰県が地元だがここも名士が多い。


 荀爽は李膺を師として崇めているくらいなので彼がいる間はここを離れないとは思うけどな。


「で有ればまずは荀文若と縁を結ぶのが良いでしょう」


「その理由は何だ?」


「荀一族は名士として名高いですからね。

 逆に中常侍・大長秋であった曹季興の養子である曹巨高の子である曹孟徳を嫌うものは多いでしょう」


「当人はそれが嫌だから洛陽から逃げてきたんだと思うけどな」


「逃げたところで生まれた家が変わるわけではございません。

 生まれによって扱いが決まるのは自明ではございませんか」


「そう言われるとたしかにな……」


 この時代では生まれた家と土地で身分が決まってしまうのは事実だ。


 俺だって涼州ではそれなりの名家生まれだから今の地位があるんであって、決して実力だけで登ってきたわけではない。


 辺境では異民族と仲のいい豪族も多いが、中央から見ればそれは許されるものでないと考えるものも多いようだしな。


「むしろ曹孟徳の妻は荀一族から出してもらうほうが良いかもしれません」


「なるほど、そうすれば名士とのつながりも出来るな」


 結果として俺の娘は荀彧の所へ嫁ぐことになった。


「父様今までありがとうございました」


「うむ、幸せに暮らせよ」


 こうして血縁を結ぶことで家の行き来の機会も増えることになる。


「賈文和がわが蕭何であるとすれば、あなたは我が張子房であろう」


「過分な評価恐れ入ります」


「ぜひこれからも仲良くしてほしい」


「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」


 現在の李膺は并州で自塾を開いて儒学や軍学の師となっているが彼と皇甫規が居る并州には異民族が侵入してくることもなく平和だ。


 それに伴い、李膺や荀一族とも縁戚関係があった鍾繇もやってきている。


 それくらい彼らの軍事的名声は異民族の間にも響いているのだな。


 今までは儒学などの師匠を得ることができなかった俺もいっしょに勉強はしてる。


 兵法に関しても賈詡といっしょに独学で学んできたがやはりちゃんとした師匠がいるに越したことはないからな。


「やっぱりよく知ってる人に教えてもらえるとだいぶ違うな」


「そうでございますな」


 李儒は洛陽に残って情報を送ってくれてるが、やはり張奐は頑張ってはいるが天子が宦官を頼りきっているのもあってどうにもならないらしい。


 張奐を三公に推薦する声があったのだが、それを阻止するために宦官達は罪をでっち上げて張奐は逮捕され、官職を取り上げられた、もっともあんまりにも冤罪の方法が杜撰ですぐに釈放され官職は再び与えられたようだが。


 だが、その後に宦官出身で司隸校尉の王寓が銭を払えば官職を推挙するとやって来たとき、多くの官僚は彼を畏れて銭を献上したがしたが、張奐だけがこれを拒んだため、王寓の怒りに触れ、張奐は禁錮となって官職を取り上げられたとのことだ。


「まったくもって洛陽は魔窟だな」


「まことでございますな」


 張奐は戸籍を移した弘農郡に戻って門を閉めて家から出ず、弟子を養って教育に励んでいるらしい。

 しばらくは宦官の専横は続くのだろうな、残念なことに。

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