永寿2年(156年)
并州に異動になったんで呂布に会えるかと思ったけど…
さて、赴任してすぐに張奐の下で戦った俺は功績を上げて出世することに成功した。
これは俺の力というより経験豊富な張奐の軍略に頼るところが大きかったが、功績は功績だ。
その後も使匈奴中郎将となった張奐の下で働いていた。
多少の馬賊討伐などは有ったが大規模な反乱はなくなり涼州は概ね平和になったところで年も変わって永寿2年(156年)になった。
そして張奐に唐突に言われた。
「この度命により并州の匈奴討伐に赴くことになった。
いっしょに来てくれるかね?」
そう聞く張奐に俺はうなずく。
「はい、張然明様にお供させていただきます」
しかし弟や賈クはまだ未成年でもあるので連れていけない。
最も史実通りに歴史が進むにならば張奐は梁冀が誅殺された時に関わりがあるということで一度失脚するんだが俺もそれに巻き込まれて一旦涼州に戻ることになるはずだ。
「しばらくお別れだがそのうち戻ってくることになると思う。
心配しないでいいぞ、畑なんかをちゃんと守ってくれな」
弟はコクリとうなずいた。
「うん、わかったよ兄ちゃん」
賈クも残念そうにしている。
「私も早く成人したいものです」
「そうだな、二人が成人したら俺と一緒に戦ってもらうつもりだ」
一方3人の妻たちや使用人はいっしょに并州へ行くことになる。
「ちょっと大変だと思うけど3人共よろしくな」
「はい、承知致しております」
「それがお役目であれば私達もついていくのが努めでございます」
「ええ、大丈夫でございます」
役人は配置換えのたびにあちこち移動しないといけないので大変だ。
張奐の下で1000人を率いる副将の一人として俺は家族と共に馬車で并州まで移動する。
涼州は西の異民族との境の州だが并州は北の異民族との境の州だ。
「并州の気候などは涼州とあまり変わらないようですね」
「うむ、住んでいるものの気質などもあまり変わらぬようだ」
俺たちは官舎として用意されていた屋敷に住むことになった。
俺の今の官位である6品もそこそこ高い官位だしな。
官位は1品から9品まで有って1品の年収は現代換算だと1億相当になるけど現在では大将軍の梁冀しか1品はいないはずだ。
日本での官位は正一位から少初位下まで30段階に分かれるがそれのもとになったのが九品で正一位と従一位を合わせて一品と対応すると思えばいい。
だから6品というと日本でいう六位相当なのでまあまあなのだ。
最も平安時代以降は七位以降はほぼ任命されなかったので六位というと一番下っ端みたいに思えるけど。
さて、暫くの間は平和だったんだけど匈奴の有力視族の一つである休屠各と別の異民族である烏桓が結んで叛乱をおこした。
国境を超えての五原郡に侵入し駐屯してしまったのだ。
そして、異民族が飯を炊く煙が上がっているのも見えた。
「匈奴と烏桓が来るぞ!」
「逃げないと殺される!」
兵たちは恐慌に陥り、武器を捨てて逃亡しようとした。
そんな中で張奐はゆったり落ち着いている。
「敵陣に炊煙が見えますがこちらへ攻撃を掛ける前の腹ごしらえでしょうか?」
張奐は、帷幄の中でゆったりと座りながら俺に答えた。
「うむ、炊煙が見えるならばあちらは飢えているというわけではなく、派遣されたものが変わったと聞いて侮っているのであろう、心配は無用だ」
その言葉を聞いて兵士たちは落ち着きを取り戻した。
さらに張奐は烏桓と交渉を行って、味方に引き入れた、匈奴の族長を斬らせることで混乱させて、その様子を見て匈奴の軍に突撃をかけた。
「敵は混乱している、攻めるは今ぞ!」
族長という司令官を失った匈奴は効果的な反撃を行うこともできず、あるいは射殺されあるいは降伏し、あるいは逃げ出し俺たちは大勝した。
「張然明様はやはり大したものです」
「うむ、勝ちやすきに勝つことこそ肝要だ。
そしてどんなときでも慌てず冷静にいることだ、そうすれば真実も見えてくる」
「なるほど、そういうものなのですね」
そして街に戻れば子どもたちが両手を上げてよろこんでいた。
「おいちゃんあいがとー」
「あいがとー」
「おう、もう大丈夫だからな」
この子どもたちの中に呂布や高順や張遼などもふくまれているかも知れないけど彼らを配下に入れるとしても20年後くらいでないと成人すらしてない可能性もあるのか。
事実で并州刺史にはなってるはずだが多分早すぎたんだな。
うまく時期を調整して呂布や高順や張遼なんかは是非仲間にしたいものだ。
豫州潁川郡の荀イク・荀攸・鍾繇・郭図ら軍師たちも手に入れたいけどな。
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