漢安元年(142年)
体が自由に動かせるようになったらまずは体を鍛えよう
さて、俺は乳を飲んでは寝て、天気が良いときなどはちょこちょこ歩いたりしながら、なんとか大病もせずに数えで4歳まで無事成長できた。
「うむ、無事に育ってくれて嬉しいぞ」
「そうですねぇ」
「はいありがとうございます。
ちちうえとははうえのおかげです」
もしかしたら幼児性健忘症でいままでの記憶が全部リセットされてなくなるのではないかという心配もしていたが幸いなことに記憶のリセットなどは起こってはいないようだ。 いや細かい記憶は覚えていないとは思うが。
そして数え4歳満年齢で3歳、このくらいになるとある程度体ができてきて自由に歩いたり喋ったりできるようになる。
なので、脳・脊髄・視覚などの感覚器官・反射神経などを鍛えるために可能な限り無茶ではない範囲で体を動かしたり手先を使ったりする運動をし始めるとしよう。
脳は数えで6歳頃にはほぼ完成し、運動神経系統も6歳には80%程度完成してしまう。
なので基本的な運動やバランス感覚のとり方を覚えるのはある程度早いほうが良いからな。
「とうさま、わたしもおとことしてうまにのってゆみがうちたいです」
「おお、それは良いことだぞ」
父上はよろこんでいるが母上は心配そうだ。
「まだ小さいのですから無理はしないでちょうだいね」
「はいははうえ、むりはしません」
こうして俺は父上が用意してくれた子馬で乗馬をまずは始めることにしたのだ。
「私は卓だよ、よろしくね!」
俺が子馬にそういうと子馬は首を傾げるような仕草をした。
見知らぬ人間が来たが誰だろうという感じだろうか。
本来馬は臆病で神経質な動物だから仕方ないけど。
ちなみにこの時代の乗馬は手綱や轡・鞍や鐙のない裸馬なので乗馬はできるようになるまでものすごく大変だったりする。
「じゃあのるよー」
子馬の背に乗ろうとしてずり落ちたりするし、馬へ飛び乗るためのジャンプ力をまず鍛えないと駄目かな?
馬の背中に乗れるようになったらまずは歩かせるのだけど、背中に乗るだけど馬を歩かせるのではやっぱり大きな違いが有ってバランスを崩して転げ落ちたりする。
「わああ!」
馬の背から転げ落ちても下草がクッションになって落馬の衝撃をやわらげてくれるが打ち身や擦り傷等は当然普通にできる。
「あいあたた、ごめんね、つぎはもうちょっとうまくやるよ」
最初は子馬との意思疎通もうまくいかなかったけど馬の動きに合わせて前後左右のバランスを取れるようになり段々と長く乗れるようになってくると、なんとなく俺の思ってることを子馬が感じ取ってくれるようになり長い間馬に乗れるようになってくる。
「よーし、これからはゆみのれんしゅうもするぞー」
たてがみにつかまった状態などで馬をただ歩かせるだけよりも両手を使って弓を射るほうがバランスを取ったりするのが難しいのは当然。
「うわあ!」
やっぱりバランスを崩して馬から転げ落ちたりもするけど、史実における董卓は弓を左右のどちらにも射ることができたそうだ、俺と同じようにきっと幼少時から訓練していたのであろう。
なんとか頑張って練習を続けて最後には馬に乗ったまま左右に弓を打てるようになった。
こうして体でバランス感覚を覚えることで後に馬が代わっても騎乗して弓を射れるようになるはずだ。
「ちちうえできれば、しゅくきくにもまぜていただきたいです」
やはり俺の言うことに嬉しそうに父上は答えた。
「ふむ、ではお前と同じくらいの子供で隊を組んでできるようにしよう」
「ありがとうございますちちうえ」
やっぱり母上は心配そうだけど。
「怪我には気をつけるのですよ」
「はい、わかっておりますははうえ」
蹴鞠、日本では後に蹴鞠となって伝わるこの球技はこの時代では12人ずつのチームに分かれて手を使わないで基本的に足で蹴ることで一つの鞠を奪い合い「球門」に入れた数を競う競技で軍事訓練の一環としても宮廷競技としても行われているもの。
いわゆる21世紀でのサッカーにかなり近い競技だ。
ま、大人が行うものはチームプレーとかもあるんだろうけど子供の遊びレベルでみんなで鞠に集まっては適当に蹴っ飛ばしたりもするわけだが走ったり跳んだりぶつからないよう考えたりといろいろ楽しい。
「いくぞー」
「まけるかー」
「まりはわたさないぞー、それー」
そんな感じであちこちに鞠が蹴っ飛ばされてはそこにみんなが集まっては鞠が蹴っ飛ばされるの繰り返しだったりもするけど、まあそれでも俺はまずは体を動かして走ったり跳んだり転んだり様々な動作を覚えさせ、同年代のものと一緒に遊ぶことから始めたのだ。
できない動作なども今は多いけどそのうちできる様になるはずだし、教養や知識を覚えるのはもっと後からでもいいはずだからな。
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