ホームレス(エッセイ)

 言っては悪いけど、ホームレスは、何だか不気味だ。危害を加えられたりすることはないだろうし、むしろ彼らの方が社会的弱者なのに、傍を通るとものすごく負のオーラを感じてしまう。


 ホームレスは増えているのか、減っているのかはわからない。俺が大学生くらいの頃は、新宿駅の通路の辺りにはホームレスのテントがいっぱいあった気がするけど、この間行った時は1つもなくなっていた。(*夜になると復活するみたいだが、昔は早い時間からあった気がする)


 上野公園の林の中にも昔はビニールシートで作ったテントがたくさんあったけど、今は多分ないと思う。


 俺がホームレスに感じる恐怖は、自分もそこまで落ちてしまうんじゃないかという予感のせいなのかもしれない。


 朝早く起きて、資源ごみを出しに行くと、ホームレスの人が空き缶を集めていてギョッとすることがある。たまに、前日の夜に漁っていることもある。公園や河川敷などにいる分にはまだいいのだが、家の近くに来られると、私道でもないのにまるで不法侵入されているような気分になる。


 そういえば、こんなことがあった。


 大学時代に、児童公園に行った時、昼から酒を飲んでいるおじさん2名がいた。


 俺は卒論の調査か何かで、一人で公園に行ってホームレスにインタビューをしていたと思う。そしたら、酒を飲んでいたのは、一般の人とホームレスのおじさんだった。一般の人は「〇〇さんとは気が合うから、こうやって飲んでるんだよ」と、チューハイを飲んでいた。

 ホームレスの方は薄汚れていて、ちょっと知的障碍のある人のようだった。笑顔が子どものようで、涎を垂らしていた。

 俺は違和感を感じた。

 そのおじさんは、無垢なホームレスに安らぎを感じているんだろう。余程疲れてるか、仕事や私生活でストレスを感じているのかなと思ったものだ。


 俺はサラリーマンだけど、ホームレスの人たちを見ていて人事じゃないなと思う。管理職で一戸建てに住んでても、今でもその意識が抜けない。仕事をクビになったり、大きなミスをしてしまう夢を見たりする。だからこそ、ホームレスを見て背筋が寒くなる思いがするのだ。

 でも、そうなってしまったら、意外と順応するのかもしれない。

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