高所恐怖症

 俺は軽度の高所恐怖症だ。飛行機とかは怖くない・・・でも、落ちるかもしれないから、どうしても飛行機でしか行けない地域に行く時以外は乗らない。飛行機は最も安全な乗り物だ。それは知っている。車や自転車より事故の発生割合は低い。飛行機事故に遭う確率はわずか485万7000回に1件の確率で、1日1回飛行機に乗ったとして1万306年に1回の可能性しかない・・・。発展途上国ならともかく、日本の航空会社の飛行機が落ちる可能性はほぼないと言っていい。


 しかし、1985年に日本航空123便墜落事故が起きている。


 その夜のことを今も覚えている。俺は中学生だった。8月12日・・・夕飯を食べていたら、ニュース速報が出て「日航機が墜落した」ということを知った。羽田空港発、大阪国際空港行の定期便だった。墜落時間は18時56分30秒頃。


 なぜか、伊豆半島上空で、機体後部の圧力隔壁が破損、垂直尾翼と補助動力装置が脱落してしまった・・・なぜ、こんなことが起きてしまったのか見当もつかなかった。


 しかし、7年前に同機体が着陸の際に尻もち事故を起こしていて、そのせいで機体にゆがみが出た可能があるとか・・・。米国の調査団からは、ボーイングの修理ミスを指摘されている・・・。


 日航機墜落で、乗客乗員524人のうち助かったのはわずか4名だった。その後は毎日ワイドショーで凄惨な事故の情報が繰り返し報道されていた。そのせいでトラウマになってしまったのかもしれない。

 宝塚の人や「上を向いて歩こう」の坂本九さんが乗っていた。


 こうやって書いていても涙が出て来そうになる・・・。

 

 恐怖症というのは本人が忘れている過去のトラウマが原因があるようだ。もしかして、俺の高所恐怖症の原点はあの事故なのかもしれない・・・。


 一応、名誉のために言っておくと、高所恐怖症というのは、哺乳類のDNAに組み込まれた根源的な恐怖で、動物も幼児も持っているらしい。だから、誰しもが高所に対する恐怖というのをある程度持っているらしい。

 でも、最近は幼い頃からマンションに住んでいる子供が多いから、高い所が怖くない子供も増えているとか・・・。高い所はやっぱり危ない。


 俺は、子供の頃2階建てしか住んだことはなく、田舎だから学校も2階までしかなかった。マンションに住んでいた時も、夜景を楽しむとかそういう感覚はなかった。

 

 子供の時は、よくエレベーターが落ちて行く夢を見ていた。

 扉のないエレベーターがものすごいスピードで下に落ちて行き、恐怖で座り込んでいる。それがいつまでに一番したにたどり着かない。際限なく続く恐怖で俺は気絶した・・・。


 こんな風に俺の高所恐怖症は随分とこじれてしまった。

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