シェアハウス

 みなさんは、シェアハウスに住んでみたいと思ったことはあるだろうか。


俺は協調性がないし神経質だから、シェアハウスなんかにはとても住めない。

 でも、俺の元同僚(男)で、シェアハウスに住んでいる人がいた。節約目的というよりも、一人が寂しくて住んでいたそうだ。彼は学生の時のように、シェアメイトと一緒に食事したり、イベントをやったりするのが好きだったようだ。

 

 シェアハウスは賃貸マンションに比べて、ものすごく安いわけではない。

 個室だと普通の賃貸に比べて2万くらいしか変わらない。

 7万の家賃が5万に下がるくらいだ。

 だから、人に気を遣うストレスを考えたら、普通の賃貸マンションの方がいいと思う。


 シェアハウスはゴミ捨てや掃除が当番制だったりするし、キッチンや風呂、トイレは共同だ。男女OKの所だと女性はセクハラに遭うこともあるようだ。

 それに、部屋に外部の人を呼べなかったり、禁止されている場合もある。

 しかし、シェアハウスなら友達がたくさんできるのは確かだ。さらに、結婚するカップルもいるみたいだ。

 うらやましいような気もするが、たまたまそうなることはあっても、そんなに簡単に出会いは転がっていない気がする。もともと社交的だったり、コミュ力の高い人なら可能だということだと思う。

 

 俺の同僚のA君は、シェアハウスの中でも、ドミトリーという2段ベッドが置いてある部屋に住んでいた。個室より家賃が安い。完全に学生のりというか、ユースホステルに泊まるような暮らしが好きだったんだろう。彼のいたシェアハウスは外人も多かったそうだ。そこで毎日英語を勉強できるし、世界中に友達ができる。俺も、今、学生だったらやってみたかったかもしれない。


 しかし、シェアハウスはトラブルも多かったそうだ。騒音、匂い、盗難。キッチンを片づけないなどでストレスがたまったりする。ある程度は予測できるようなことばかりだ。


 その中で、A君が一番記憶に残っていたのは、次のようなことだった。


 A君は男4人で1部屋を使っていた。

 2段ベッドが2台あって、上下に1人づつ寝ていた。


 A君の他に日本人の大学生1名と、中国、アメリカからの留学生が1名づついたそうだ。


 A君は2段ベットの上の段。その下はベトナム人の男だった。

 向かいのベッドは上が日本人、下がアメリカ人だ。


 わりとマナーがよくて、みんな夜になるとカーテンを閉めて静かに過ごしていたらしい。


 A君が寝ようと思って、電気を消そうとすると、下から明かりが漏れてくる。

 まだ起きているんだと思って、気にせず電気を消した。何となく明るく感じるから、アイマスクをしていたそうだ。

 それでも、夜中カリカリ何か書いているので、うるさいなと思っていた。勉強しているんだろう。なら仕方がない。A君はそう思って、そのまま寝ていたが、夜中トイレに行きたくなった。


 そして、体を起こしてアイマスクを外した。


 すると、下のベトナム人の男性(Bさん)がAさんの目の前に座っていた。

 Aさんはびっくりして声を上げた。


「うわぁ!あんた、なにやってんだよ!」


 Aさんは叫んだ。

 すると、Bさんは「ごめんなさい。間違えました」と言って下に降りて行った。


 Aさんは、きっとスマホを盗もうと思ったのだと確信したが、証拠がないからそのままトイレに行った。


 そして、Aさんが部屋に戻った時に、Bさんのベッドのカーテン越しに声を掛けた。

「Bさん、ちょっといい?」

「はい」

「さっき、何してたの?」

「ちょっと寝ぼけて間違ってしまった。ごめんなさい」

 Bさんは言った。酒によっているわけじゃないし、間違えるはずなかった。

しかし、そのたどたどしい日本語が可愛らしくて、Aさんは許そうと思ったそうだ。

 

 すると、それを聞いていた、他のベッドの2人も起き出して来た。

「何やってたんだよ」

「何か削ってるような音がしたけど。何?」

 すると、Bさんがいきなりナイフを取り出した。

 目も血走っていた。


ギャー!!!

ギャー!


 3人は大声を上げて部屋から逃げたそうだ。


「助けて!殺される!」


 そして、個室に入れてもらって、警察を呼んだ。

 Bさんはそのまま外に逃げてしまったとか。


 その後、Bさんは捕まった。警察の取り調べによると、BさんはAさんがたてる騒音に悩まされていて、いよいよ殺そうと思っていたらしい。Aさんは鼾がひどくて、よくおならをしていた。Bさんは、お金もなくて、ぎりぎりの生活をしているから、もう耐えられなくなってしまったそうだ。


 そして、下の二段ベッドの隙間から、頭を刺そうと思って板をカリカリやっていたけど貫通しないから、上の段に上ってAさんの寝首をかこうとしたら、目を覚ましてしまって断念したそうだ。

 

 Aさんはすぐに引越したそうだ。

 それからはもう、シェアハウスには住んでいない。 

 


 

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