古着

 俺はブランド好きだ。

 でも、新品を買う余裕がない。

 というか、金がもったいなくて買えない。

 例えば、バーバリーのTシャツに4万も出せない。


 だから、服は店で買うより、フリマアプリなどで古着を買うようにしている。


 自分が着なくなった古着も売っている。

 ブランド物だと、ボロボロでも売れるから不思議だ。

 3,000円の服を買って1年着てゴミになるのと、20,000円の物を買って3~4年着るのとでは、どちらが得かはわからない。

 ブランドなら、ボロボロになっても2,000円くらいで再販できる時もあるから、後者の方が俺の価値観に合っていると思う。


 俺はサラリーマンだから、これまで、仕事で着ていた服なども売ったが、結構、気持ちの悪い落札者がいる。

 例えば何度か履いた靴下や、ぼろぼろの靴などを買う人がいるのだ。

 それから、使用済みのタオルも売れた。

 匿名なので買ってくれる人がいたら有難いのだけど、どうして買うのか、何に使っているかが気になってしまう。


 恐らくサラリーマン好きのゲイの人がいて、俺が西島秀俊みたいな超イケメンだと勘違いしているのだろう。


 某フリマサイトに気持ちの悪い人がいた。俺をお気に入りに入れてくれてて、俺が古着を出すと即落札してくれる(これを読んでいないことを祈る)。


 最初は服の趣味が似ているのかと思っていたけど、試しに履き古した靴下を出してみたら、その人が買ったのだ・・・評価も「想像したよりきれいでした」とか書いてあった。


 もしかして、身バレしているのではないかと不安になって、その人のページをチェックしてみた。その人の出品物は匿名配送になっていない。


 俺は買い物をする時、時々早とちりして、匿名配送をやってない人から買い物をしてしまう。


 そういう人は、家にある切手で送りたいとか、かさばる物や安い物は、郵便の方が送料が安く済むから、という理由で匿名にしていないようだ。

 しかし、宅急便なら大して送料が変わらないか、もしくは損なのに、あえて匿名配送にしてない人もいる。それは前から不思議だった。


 俺はその気持ち悪いユーザーの取引履歴を調べて、ずっと前に俺がその人から物を買ったことがあったのに気が付いた。簡単に言うと趣味に関するものだった。


 それによって、俺に親近感を覚えたのかもしれない。


 その人が今は俺の古着を集めてくれてるらしい・・・。

 ブロックしたいが、家がばれているので逆上されても困る。

 俺は服を売るのをやめた。


 その人も都内の人だった。

 残念ながら俺は買い物した時の封筒を捨ててしまったから、住所は知らない。


 その人が、わざわざ俺を見に来たりしないといいのだが。

 どこかから見られていたりしても、通行人だと思って気が付かないだろう。

 一戸建てだから、出て来たら俺だとすぐわかってしまう・・・。

 そしたら、がっかりして去っていくだろうか。


 しかし、人の好みはわからないから、たまたまドストライクかもしれない。

 

 害はないから気にする必要はないのかもしれないが。

 やはり気持ちが悪い。


 ネットはまったく無関係の人間同士を結び付けてしまうから怖い、と改めて思う。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る