女人禁制
みんなは女人禁制と聞いてどんな風に思うだろうか。
男女差別?旧時代的?
昔はいくつもの山が女人禁制だったそうだ。
例えば富士山。意外なことに女性が登れるようになったのは、明治時代6年からだそうだ。女人禁制だった主な理由としては修行の妨げになるからだそうだが、その他にも、女性が山に入ると山が穢れ、不作になると言われていたそうだ。
普通に考えて、男ばかりの中に女が混じっていたら、男は気が散るし、女には身の危険があると思う。
例えば、女性を暴行して、谷底につき落としてしまえば、証拠は残らない。今はマナーのいい登山者ばかりだが、事件が全く起きていないわけではない。
昔だったらもっと陰惨なことが行われていただろう。
俺の印象だとやはり、『女人禁制』は女性の保護のためにあったような気がしてならない。
これから話すのは、現代にあったことだ。
取引先に男しか雇わない変わった会社(A社)があった。
事務処理などは入社3年くらいまでの若手が担っていた。
なぜ、女性を雇わなかったかというと、女性を雇うと業績が悪くなるという言い伝えが、先代から受け継がれていたからだ。
詳細な企業情報を明かすのは控えたいが、業種としてはメーカーだった。
この会社の独身率は高く、若い男たちは女性を入れて欲しいと何年も社長に頼んでいた。
しかし、この会社は取引先に恵まれていて、業績も安定していたから、女性を雇わなかったお陰でこれまでやってこれたと社長は思い込んでいた。
確かに、事業拡大など目論まなければ、当分やっていけそうだった。
俺が社長に始めた会ったのは25年くらい前だった。
25年も経てば社長も引退する。
やがて、息子が跡を継いだ。
息子は伝統を変えるつもりはなかったが、頭のいい男だったので、個人で派遣会社を作って、その会社に派遣しようと思った。事務処理などは男より女の方が向いている。女は同時に色々なことを処理できるが、男はそれが苦手だからだ。しかも、事務職の社員にボーナスを払うより、派遣を入れれば人件費を抑えられる。
そして、かわいい子だけを自分の会社に派遣した。
普通、若い子は大企業に行きたがることが多いが、A社に行ったのは見た目はきれいだが大企業には派遣できないような人たちだった。
通常、大企業では外見よりも、それなりに常識や経験のある人を求めるからだった。
こんな風に、A社では女性が働いているが、直接雇用はしておらず、派遣会社に派遣費用を払っているだけだった。
しばらくは何ともなかった。
新社長は、社員に感謝され、皆やる気を出しているので、いいこと尽くめだと悦に入っていた。
しかし、半年ほどして、一番大きな取引先だったB社が倒産してしまった。
新規事業の失敗で、業績が悪化してしまったからだ。
これにより、A社は売り上げの約3割を失ってしまった。
社長は希望退職を募った。
すると、会社の将来性を危惧して、仕事のできる若手ばかりがやめて行った。
残ったのは、あまりぱっとしない社員と年齢が45歳以上の人ばかりだった。
さらに、派遣の人たちのミスで顧客からのクレームが増えていた。
数量間違い、納品日間違い、経理の人の振込忘れなどだ。
さらに、当座預金にお金を移すのを忘れて、不渡りを2回出してしまった。
社長は、派遣を外見ではなく、もっと経験のある人たちに入れ替えることにした。
しかし、その後も市場のニーズが変わったり、顧客がもっと安い物を求めるようになって、次第にA社の商品が売れなくなって行った。
結局、社長は廃業することにした。
今は、自身の派遣会社の方で頑張っているそうだ。
A社の社員は、派遣会社で雇用したということだった。
もし、派遣社員を入れなかったら今もA社はあっただろうか。
あったかもしれないと俺は思う。
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