焼けたお金(実話)(おススメ度★)

 これは、知り合いAさんから聞いた話だ。


 Aさんの親戚が亡くなった時、火葬場で遺体と一緒に10円玉を燃やしたそうだ。

 そして、そのお金がお守りになるということで、Aさんにも1枚くれたそうだ。

 確か、持っているとお金が貯まると言われたとか。


 この習慣のいわれは、三途の川を渡る時の渡し賃とのことだ。

 そのお金があることで、無事に冥界に渡ることができるんだとか。

 地獄の沙汰も金次第なので、以前は火葬の時に遺体と一緒に六文銭を燃やしていたが、現在では六文銭を模した紙などを燃やす風習に変わっているそうだ。


 本物の小銭を一緒に燃す習慣は、今も東北・北海道に残っているという。

 地方によっては小銭を焼くのが認められているのかもしれないが、数年前にうちの母親を火葬にした時は何も入れてはいけないと言われたものだ。


 Aさんはそのお金を財布の小銭入れに入れていた。

 焼けて赤茶色に変色しているので、他のお金と区別がついたそうだ。

 祖父母などのものなら、普通の小銭と分けるだろうが、会ったことのない親戚で有難味も薄かったそうだ。

  

 Aさんはそのお金を間違って普通のお金として支払いに使ってしまった。

 気が付いたら、なくなっていたそうだ。


 見ず知らずの人の遺体と一緒に焼いたお金が、自分の財布に入っていたら気持ちが悪い。


 もしかしたら、この小説を読んでいるあなたも、Aさんの焼けた10円玉を持っていたことがあるかもしれない。

 

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