霊能者(実話)(おススメ度★)

 俺は1970年代生まれだ。

 俺が子どもの頃は、オカルトブームの全盛期だった。

 テレビのゴールデンタイムに、心霊、UFO、宇宙人、未確認生物、ノストラダムスの予言、超能力などが盛んに取り上げられていた。


 今は科学が発展しすぎて、あやふやなこと不可思議なことなども、すべて合理的な説明がつくようになってしまった。


 だから、霊が映っているというビデオなどを見ても合成なんじゃないかと疑ってしまう。


 大昔の人が日食や月食を災いと信じていたのに対して、

 今、そう思っている人は皆無だ。

 それと同じ理屈だと思う。


 しかし、霊能者というのはいつの時代もいなくならない。

 人は迷っている時、何かにすがりたいのだと思う。


 今から書くのは実話だ。


 俺は自ら霊能者に会いに行ったことはないので、そういう人には今まで2人しか会ったことがない。


 1人は大学の時に会った。

 もう1人は社会人になってからだ。


 大学の時に会った人は、本物だったのではないかとちょっと思っている。


 その人は友達の彼女だった。

 以前から、彼女に霊感があると聞かされていた。


 俺がそういうのに興味があるから会ってみたいと言うと、ある時、そいつから家に電話がかかって来た。


「今部屋にいるから来れば?」と言うのだった。


 その子はきれいな子で、一見しただけではごく普通の女子大生にしか見えなかった。

 霊能力があることを普段は隠していたそうだ。


 俺は就職に不安を感じていたので、見てもらいたいとその子に頼んだ。

 どういう業種に行ったらいいかとかそういうことだ。


 するとその子は、俺の名前と生年月日を尋ねた。

 その情報が必要らしかった。


 霊感があるという人と対峙すると、すべてを見透かされているような神秘的な気持ちになる。

 俺はその子が本物の霊能者だと思い込んでいた。


 その時、俺が聞いたのは就活のことだけ。


 彼女は面接が上手くいく日にちを教えてくれた。


 〇月〇日はかなり可能性が低く、〇月〇日は50%くらい、〇月〇日は大丈夫だろうということだった。


 そして、その通りになった。


 もしかしたら、悪い日にちは最初から無理だと思って受けていて、いい日は受かると思って受けていたことで、面接官の印象がだいぶ違ったのではないかという気がする。


 つまり、俺が洗脳されてしまってたわけだ。


 その先も色々相談すればよかったかもしれないが、当たり過ぎて怖かったので、それっきりだった。将来を知ることが必ずしもいいとは限らないからだ。友達もしばらくして彼女と別れていた。


 もう一人の人は社会人になってから出会った。

 こちらも女の人だった。

 霊能者は大抵女性だ。


 その人は、会社の同僚だった。

 2人で同じ仕事を担当していて、一緒にいる時間が長かった。

 そのうちその子が、「私、霊感があるの」と言い出した。

 それで霊能者の元で修行をしてるそうだ。

 そう言えば、手首に数珠をつけていた。


 俺はその人に見てもらったが、後々考えると、それがすべて外れていた。

 結婚、仕事、恋愛、健康のことなどだ。


 唯一当たっていたのは、俺がその会社をもうすぐ辞めるということだけだった。

 その人の霊視を長い間信じてしまって、人生を誤ってしまったと思う。

 30代後半に5歳くらい年下の女性と結婚すると言われたから、20代で出会った人とはどうせ結婚しないと思ってスルーしてしまった。

 

 そして、30代で会った人とは、この人と結婚するかもと変な直観を抱いていたのだ。お陰で50代でまだ独身だ。


 最近、ネットで色々見ていると、霊能者に見てもらったら、「私の前世は〇〇だとわかった」とか、「霊が下りて来た」と話している人がいる。

 どちらも私生活でトラブルを抱えている人たちだ。

 

 霊能者の人がタダで見てくれるならいいけど、お金は出さない方がいい気がする。

 なぜなら、優れた霊能者でもすべてが当たるとは思わないからだ。

 

 見てもらった方は、すべてが本当だと思ってしまうものだ。

 

 最悪、霊能者に言われた通りに離婚したり、全財産をつぎ込んだだけでは足りず、さらに借金をしたりしてしまう。

 

 だから、俺は霊能者についてはテレビで楽しむだけにしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る