天使がいなくなる日

「本日をもちまして、この企業を解散します」

 その瞬間、社員からはどよめきが上がった。

「我々は社員全員が天使の、悪魔撲滅企業『ユーフォリア』だ。悪魔撲滅協会加盟企業として、ほかの企業とも連携しながら奴らを追い払ってきたね。でもすべて撲滅された結果、天使の役目も終わりになったんだ」

 社長は消え入りそうな声で語った。社員からもすすり泣く声が聞こえた。

「ここまで頑張ってくれた君たちを誇りに思う。今まで本当にありがとう」

 こうして悪魔撲滅企業は幕を閉じた。私ももう天使ではなく、人間もどきの何かとして生きなきゃいけないと思うと、不安になった。


 2カ月後、私はスマートフォンの着信音で起こされる。

「もしもし」

「社長の吉川だ。大至急、会社があった場所に来てほしい。大量の悪魔が近辺で暴れているんだ」

 突然の電話に動転したが、同時にうれしくなった。

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