食中薬

 ある日、白木(しらき)乳業横浜工場に、不思議な銀色の光が入り込んだ。

 牛乳を作る機械に光が混じり、一瞬の発光を見せたという。

 従業員たちは驚いたが、気のせいだとしてそのまま製造を続けた。


 やがてその牛乳を飲んだ人々から、妙な報告が相次いだ。

「今までプールで5mも泳げなかった息子が、急に50mも泳げるようになった!」

「ずっと家事をしていて疲れてばかりでしたが、ある日から全然疲れなくなりました!」

「高校の野球部ですが、今年ホームランを10本打ちました!」


 これを受けて白木乳業の社長は記者会見を開いた。

 その会社の牛乳から、人の体を急に強くする「食虫薬」が検出されたというのだ。

 結果として白木乳業の売上は急増し、乳製品業界のシェアをほぼ独占した。

 その牛乳を飲んだ人はこぞって体力がつくようになったので、いつしか日本は、世界でトップクラスに体力がある国に認定された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る