この区役所はウソを許さない
秀斗(ひでと)がいるカウンターの手前には、奇妙な長方形の床があった。
この区役所のフロアパネルはクリーム色で統一されているが、そこだけ白黒の縞々だった。
三人分が横に並べるぐらいの幅で、縦は二人分ある。
この白黒の床は、地元民、とくにモテたい志向が強い者には恐れられていた。
この日も一人の男性が、うれしさが見え隠れする表情で婚姻届を持ってきた。
「これ、お願いできますか」
秀斗は書面の中身を確かめた。
「本当にこの相手だけを愛すると誓いますか」
公務員とは思えない質問に、男性は怪訝そうな顔を浮かべる。
「はい」
男性は平静を装う様子で答えた。
ところがいきなり白黒の床が下向きに開いた。男性は突如現れた暗闇へ、吸い込まれるように落ちていった。
悲鳴が闇に消えた直後、床は元どおりに閉まる。秀斗は当然のようにつぶやいた。
「あーあ、また浮気してるヤツか」
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